不安を煽るYouTube動画に惑わされないように

 令和6年5月27日の投稿において、不安を煽るYouTube動画が急増していることを書きました。多くは大地震や大津波が間もなく起こり、日本の主要都市が壊滅するという内容です。本日は、この話について少し深く掘り下げて書きます。

 確かに南海トラフ大地震、首都直下型地震、富士山や阿蘇山の噴火はいつ起きても不思議ではないといわれています。しかし、これらが近いうちに起きるとし、大津波に東京が呑み込まれるイラスト等、恐怖を煽る映像を用いたTouTube動画が急増しています。

 特に酷いのは2025年7月5日4時18分または16時18分と日時を特定し、東日本大震災の約3倍の高さの大津波により日本列島の海沿いと主要都市が壊滅すると脅す動画です。この大津波は、ある漫画家の方が夢で見た内容とのことです。件の漫画家の方は、過去に東日本大震災やダイアナ妃の事故も夢で見たとしています。

 その後、「著名な予言者が2025年7月の大災害に関する予言をしている」という内容の動画がかなり多く投稿されました。このため、来年(2025年)の7月に大地震や大津波が起きると信じる方が増えている感があります。

 現在、文藝春秋やメールマガジンにも取り上げられ、かなり広く騒がれ始めています。

迷惑を受ける方がいる

 これらの動画は短期間で再生回数を稼ぎ、多くの収入を得るために投稿されているとしか考えられません。再生回数を短期間で増やすために恐怖を煽る映像(大津波のイラスト等)を多く使用しており悪質です。

 このように書くと「表現の自由があり、動画が伝える大災害は本当に起きるかもしれない。動画の投稿者は良心に基づいて投稿しているはずだ。」等と反論されそうです。しかし、それならば恐怖を煽る大津波のイラスト等を使用する必要はありません。

 新たに自宅を購入したいと考えていたお客様がこれらの動画に影響され、自宅の購入を見送る事案が発生しています。「動画の内容が心配なので、自宅の購入は来年の秋まで待つことにした。」とのことです。

 しかし、2025年7月が過ぎるのを待つ間に円安が更に進む恐れがあります。その結果、不動産価格が高騰して自宅を購入できなくなるかもしれません。2025年7月に何も起きなかったら人生設計が大きく狂います。

 建売住宅や区分マンションの販売を行う事業者にも大きな影響が生じます。動画を信じる方が増えて住宅が売れなくなると、在庫を抱えた不動産業者および仲介業者が倒産する恐れがあります。

 また、富裕層の方から「軽井沢などの高地にある保養所、または休業中のホテルを購入したい。」という要望が筆者に届いています。家族と親戚の数十名で共同生活をして2025年7月を乗り切りたいとのことです。

 しかし、焦って物件を購入し、2025年7月に何も起きなかったら何億円もの購入費用が無駄になります。 

 これらの動画により社会不安が増大し、自暴自棄に陥る方が続出し、暴力行為などの犯罪が増える懸念があります。

科学的根拠は全くない

 仮に大津波が起きる場合、原因は火山の噴火、大地震、隕石の衝突のいずれかです。しかし、現在の科学では火山の噴火および大地震が起きる日時を何日も前から知ることはできないとされています。隕石の衝突についても、落下日時や場所を事前に予測することは不可能です。

 「NASA(アメリカ航空宇宙局)が2025年7月に大型の隕石が地球に衝突することを警告している」とする動画があります。しかし、根拠となるNASAの声明に関するURLは紹介されていませんし、報道もされていません。

 大地震や大津波、火山噴火に関する動画、特に2025年7月に発生するとされる事案における科学的根拠は全くありません。惑わされないことをお勧めします。