不動産売却に要する期間が長期化、買い取り業者の利用は得策か

 お客様から不動産の売却を依頼された場合、筆者は売却の期限があるかを必ずお尋ねします。売却期間が長くなっても構わないか、短期での売却を迫られているかということです。

 緊急に売却しなければならない場合があるので、売却する理由についてもお尋ねしています。例えば住宅ローンまたは事業用ローンの返済が滞り、金融機関から一括返済を迫られている等の場合です。

 法人所有の物件では、破産の申し立てを回避する目的で大至急売却する必要に迫られていることがあります。コロナ禍により行われた、いわゆるゼロゼロ融資の返済を迫られている法人が数多くあります。

販売期間が長期化

 以上のような特別な事情がない場合でも、不動産を売却したい方は早くかつ高く売りたいと考えます。しかし、コロナ禍による経済的なダメージはとても大きく、多くの物件において購入希望者が見つかりにくくなっています。このブログにおいて以前に取り上げた、不安を煽るYouTube動画も売却期間の長期化を招いている一因であると考えています。

 現在、一般的な戸建住宅、住宅用地、区分マンションを市場流通価格で売却しようとすると、販売活動期間が長期化しがちです。コロナ禍になる前は、多くの物件において販売価格の設定を誤らなければ通常は3か月程度で売却出来ました。しかし、現在は6か月以上を要する物件が増えています。郊外や地方都市の場合は1年以上を要する物件もあります。

不動産買い取り業者

 何らかの事情により、早期の売却を希望する場合は不動産買い取り業者に購入を打診することになります。早いところでは3~4週間程度で買い取ってくれる業者があります。

 しかし、買い取り金額は市場流通価格よりかなり安くなることがほとんどです。その理由は、早期の買い取りでは瑕疵の有無や詳細を十分に把握できず、リスクが伴うからです。

 例えば土地付きの戸建住宅では建物の解体後に地中埋設物が見つかる場合があります。重金属やパークロルエチレンなどによる土壌汚染が確認された場合は土の入れ替えが必要になります。埋設物の除去や土壌の入れ替えに要する費用は買主である買い取り業者の負担になります。

 瑕疵の修復に要する費用が莫大で、買い取り金額と修復費用の合計が市場流通価格を超えることがあります。この場合、不動産買い取り業者は「原価割れ」で売却するしかありません。買い取りを繰り返す中には赤字で売却する物件があるのが実情です。

 資材価格の高騰および円安も、買い取り価格が減額される原因としてあげられます。不動産が土地の場合、不動産買い取り業者は権利関係を整理した上で建物を新築し、販売することが多いです。中古区分マンションの場合はフルリノベーションを行った上で販売することが多いです。

 資材価格の高騰により建物の建築、およびマンションのフルリノベーションに要する費用が猛烈に値上がりしています。ところが値上がりした分の金額を上乗せした価格を購入検討者に提示しても、購入を決断する方はほとんどいません。このため、不動産の買い取り価格を引き下げることになります。

 最近、一般的な住宅街にある戸建住宅および中古区分マンションは、市場流通価格の6~7割で買い取られることが多いです。

結び

 売却に日数を要してもかまわない場合は、不動産会社に通常の販売活動を依頼することでかまわないと思います。

 しかし、資金がすぐ必要な場合は買い取り業者に買い取りを依頼するしかありません。ただし、買い取り価格は市場流通価格よりかなり安くなることが大半です。

 買い取り業者を利用するのが得策であるかはケースバイケースなので、良く検討されることをお勧めします。