賃貸物件オーナーになろうとする方の勘違い(その2)

前回投稿した内容の続きです。

 本日は③~⑤について解説します。 

③表面利回りが高ければ高いほど良い物件である。 ⇒ 誤り

 表面利回りが高い理由を確認する必要があります。特に物件所在地における家賃相場より高額な家賃が設定されている物件は、よく調べる必要があります。

 建物が朽廃し、近い将来において修繕や再建築が必要であることから販売価格が安く設定され、表面利回りが高い物件があります。このような物件では購入後に多額の費用が発生することを予め考慮しておく必要があります。

 固定資産税および都市計画税の税額チェックは欠かせません。賃貸用区分マンションの場合は、管理費及び修繕積立金の金額を確認する必要があります。表面利回りが高くても、賃料収入の半分以上が税金および管理費・修繕積立金で消える物件があります。このような物件で入居者が退去したら目を覆いたくなる事態になります。

 また、販売図面に記載されている表面利回りが「想定表面利回り」である物件があります。この場合は空室があるのでその理由をよく検討する必要があります。

 設備の不具合が放置され共用部が汚れている等、物件自体に理由がある場合は修繕や清掃で解決できることが多いです。しかし、付近に競合する賃貸物件がある、最寄り駅までの間に急坂がある等の場合は空室が埋まりにくいです。

 食料品や日用品を購入する目的で商業施設まで行くのに車の利用が欠かせない物件も、空室が埋まりにくいです。

 表面利回りが高ければ高いほど良い物件であるとは言えません。

④貸室が相場よりかなり高い家賃で貸し出されており、満室である物件がお買い得。 ⇒ 誤り

 物件所在地における家賃相場の2~3割以上も高額な賃料が設定され、ほぼ満室である物件は要注意です。きちんとした賃貸借契約書が作成されていても入居者が不動産会社の関係者(サクラ)であることがあります。このような物件では購入後1~3か月後から入居者が次々に退去し、空室になることがあります。その後に入居者を募集しても、相場通りの家賃しか得られません。

 最近は、家賃保証会社を利用する物件が大半です。このため、この方法による表面利回りのかさ上げは通用しておらず、杞憂であると考える方がいらっしゃるかもしれません。

 しかし、法人が社宅として一括で借り上げている物件では家賃保証会社が利用されていないことがあります。この場合は法人自体がサクラであることがあり、購入後に一斉に退去する恐れがあります。このため、賃借人が家賃保証会社を利用して入居しているかを確認する必要があります。

 相場より高い家賃で貸し出されている物件は、満室でも要注意です。

⑤物件に「空室あります」などの貼り紙をしてオーナーが自ら入居者の募集を行い、契約書の作成もオーナーが行うことにより仲介手数料を節約できる。 ⇒ 誤り

 重要事項説明書および賃貸借契約書は、最新の法令に則った内容にしないとオーナーが極めて不利になります。このため、不動産会社に作成してもらうことを強くお勧めします。

 過去において筆者が相談を受けた事案で、オーナーが市販の書式を用いて契約書を作成したことに起因するトラブルがあります。

 「貸室を反社会的勢力の事務所として利用されているので退去させたい」と相談されたのですが、退去はかないませんでした。賃貸借契約書に反社会的勢力の排除条項および無断転貸の禁止が記載されていなかったからです。文房具店および書店で販売されている賃貸借契約書の書式を利用したことによるトラブルの相談は、この他にもあります。

 令和2年(2020年)4月に改正民法が施行されました。このため、大半の賃貸物件では家賃保証会社の利用が必須とされています。連帯保証人になる方に連帯保証の極度額(東京の場合、管理費を含めた家賃の2年分)の告知が必須になったからです。

 家賃保証会社は入居希望者における過去の滞納歴、勤務先、収入を調査した上で家賃保証契約を締結するか否かを判断します。

 家賃保証会社を利用する場合は不動産会社が貸主であるか、不動産会社が賃貸仲介を行う物件であることが必須です。仲介手数料を節約する目的で不動産会社を利用せずに賃貸借契約の締結を求める入居希望者が散見されます。しかし、このような方は家賃保証契約を締結できません。

 連帯保証人を利用するとしても、現在はコロナ禍後の大不況です。将来において代位弁済を求める際に連帯保証人が無資力に陥っていることが懸念されます。家賃の滞納が発生した場合に代位弁済を求めても履行してもらえず、オーナーが多額の損害を被ることがあります。

 入居希望者が現れた場合は家賃保証会社に家賃等の滞納歴を調べてもらう必要があります。安定した収入があり、かつ滞納歴がないことが確認できた場合に限り入居を認め、家賃保証契約を締結してもらうことが必須です。

 繰り返しますが、賃貸仲介に際しては不動産会社の利用を強くお勧めします。不動産会社の利用を拒絶する方の入居は一切認めないのが得策です。

※次回の投稿に続きます。