賃貸物件オーナーになろうとする方の勘違い(その3)

前回投稿した内容の続きです。

 本日は、⑥~⑧について説明します。

⑥家賃の滞納が発生したら「追い出し屋」を利用して力ずくで追い出し、室内の家財を搬出して鍵を替えて構わない。 ⇒ 誤り

 力ずくで追い出す行為、家財の搬出、錠前の交換は法令が禁止するいわゆる「自力救済」です。これを行うと刑法の住居侵入罪に問われます。賃借人に対する暴力行為は暴行罪に該当し、怪我をさせた場合は傷害罪になることがあります。賃借人を取り囲み、抵抗できなくする行為は監禁罪に該当することがあります。家財の搬出や廃棄は窃盗罪等に該当します。

 オーナーが追い出し屋を雇い、実行した場合は、これらの犯罪の共犯としての刑事責任を追及され、処罰されることがあります。さらに民事上の責任も発生し、損害賠償を請求されることになります。

 地方都市の方から「追い出し屋に追い出されたことを警察に通報したが『家賃を滞納したあなたが悪い。』などと説諭され、何もしてくれなかった。」等の話をたまに聞きます。しかし、東京などの大都市ではこのようなことはまずありません。

 それに賃借人が弱者救済に向けた活動を行うNPO団体等に相談すると、顧問弁護士を通じてオーナーが訴えられる場合があります。民事訴訟を提起されるとかなりの確率でオーナーが敗訴し、多額の損賠賠償を支払わなければならなくなります。

 家賃を滞納している賃借人に退去を求めても退去しない場合は法的手続により解決するしかありません。半年~10か月の間、家賃収入を得られないことがあります。さらに多額の訴訟費用が発生しますが仕方ありません。

 それに「追い出し屋」は反社会的勢力がいわゆるシノギとして行っていることがあります。利用したことにより脅迫され、ほぼ全財産を失ったオーナーがいます。このオーナーの詳細は過去の投稿を参照願います。

⑦入居審査を家賃保証会社に代行させると日時を要するので、オーナーが自ら入居希望者と面談して入居の可否を判断する。  ⇒誤り

 素人が目の前にいる方の経済的信用度を把握することはできません。1~3日を要しますが、入居希望者が現れた場合は家賃保証契約を締結できるかを家賃保証会社に審査してもらうことが必須です。

 家賃保証会社は勤務先、収入、家賃・クレジットカード等の滞納歴を調査し、家賃保証契約締結の可否を判断します。このため、家賃保証契約が締結されることをもって入居審査に代えるオーナーが多くいらっしゃいます。

⑧家賃出納や管理を全て丸投げできるので、サブリース事業者を利用するのが得である。 ⇒ 誤り

 サブリース物件は、物件を売却する場合の査定が著しく低くなります。査定を上げるためにサブリース契約を解約したいと考えても、借地借家法により容易に解約できません。オーナーの都合で解約する場合は高額の違約金が必要になります。

 賃借人は借地借家法により強く保護されています。賃貸借契約では賃貸人および賃借人相互の間における信頼関係が破壊された場合でないと賃貸人からの解約は認められません。サブリース事業者は賃借人なので強く保護されます。 

 確かにサブリース事業者を利用すると金融機関の心証が良くなるので、物件購入時のローン審査を通過しやすくなります。しかし、サブリース物件では満室時における想定賃料の約8割しか賃料収入を得られません。このため、物件を売却する際の査定価格は相場の約8割になります。

 それにサブリース事業者との賃貸借契約(マスターリース契約)における特約の中にオーナーが不利になる内容が盛り込まれていることがあります。具体的には大規模修繕を7年毎に行う、室内設備は故障がなくても5年毎に全て交換する、工事業者はサブリース会社が指定等です。

 賃貸住宅を購入する際にサブリース事業者の利用を提案されることがあります。しかし、サブリース契約を締結すると、ほとんどの場合に物件価格の約2割を損すると考えて差し支えありません。

 物件の売却を行わない場合は利便性を重視し、特約に注意した上でサブリース事業者を利用しても構わないと考えます。ただし、サブリース契約締結の可否はケースバイケースなので判断は慎重に行うことをお勧めします。