賃貸物件大家さんからの相談-賃料を値上げしたい

※本日の投稿は居住用の賃貸物件に該当します。店舗、事務所などの事業用賃貸物件には該当しませんので御了承願います。

 賃貸物件の大家さん(オーナー)から、賃借人の家賃を値上げする方法を相談されることがあります。

 現在、東京都内や川崎市、横浜市の海沿いエリアで駅近の利便性が良好なエリアにおける物件の利回りが低くなっています。山手線の内側では表面利回り2%台の物件が増えています。山手線の外側、および東急線の駅近にある物件の多くは表面4~5%です。

 この利回りでは固定資産税、都市計画税、建物および室内設備の更新・修繕費、保険料、管理費を捻出することは困難です。事業用ローンを利用して購入すると、購入した途端に赤字での運営を迫られることがあります。

 さらにこの状況で入居者の退去、家賃の滞納(代位弁済を受けられない場合)が発生すると、賃貸住宅の運営が破綻します。

 現状は利回りが低く、リスクが大きい物件が増えています。しかし、「購入してから家賃を値上げすれば良い」と安易に考えるオーナーが多くいらっしゃいます。

家賃の値上げは簡単ではない

 安易に考えるオーナーの多くは「家賃の値上げを拒むのであれば退去させれば良い」と考えています。そしてオーナーが賃借人に家賃の値上げを一方的に通告することが多いです。

 さらに「値上げを承服できないのであれば退去してほしい。」と伝えると、賃借人の多くは「家賃の値上げは承服できない。」として家賃を法務局に供託します。

 供託されるとオーナーの預金口座に家賃が入金しなくなります。賃借人に退去を求めたら「家賃は従前の賃料相当額を供託している。退去を求めるのであれば立退料として1年分の家賃相当額を請求する。」等と言われたとして筆者に相談される方がいらっしゃいます。

 借地借家法により、賃借人の権利は厚く守られています。退去を請求するために民事訴訟を提起することも一応は考えられますが、オーナーが敗訴することがよくあります。

 家賃の値上げが認められるのは、「家賃を長年据え置いていたものの、物価の高騰により修繕費が値上がりした。」等の特段の事情がある場合に限られます。

 また、オーナーが賃借人に退去を求めるのであれば、オーナーによる立退料の支払が前提です。都心にある住宅の場合、金額は10か月~1年半分の家賃相当額とされています。この金額には新しい物件に入居するのに必要な引っ越し代、仲介手数料、礼金が含まれます。

 妥当な金額はエリアによりかなり異なりますが、都心ではかなり高くなっています。数年前は半年分の家賃相当額とするのが一般的でしたが、最近はかなり上昇しています。

 家賃の値上げは容易ではありません。

まとめ

 「利回りが低い物件でもとりあえず購入し、その後に家賃を値上げすれば良い。」という考えは通用しません。

 「老後には2,000万円が必要」、「貯蓄より投資」、「新NISAで株取引をしよう」等のフレーズが一人歩きしています。景気が良くなく、物価が高騰していることもあり、副業を考える方が増えています。

 そして家賃収入は不労所得であると錯覚し、収益用不動産を焦って購入する方が増えている感があります。しかし、とても危険です。

 収益用不動産の購入を検討する際は、不動産売買を専門とする不動産会社に相談することをお勧めします。その前に、オーナーになろうとする方は不動産収益事業に関する知識を身につけておくことをお勧めします。

※事業用賃貸物件の賃料値上げ方法はケースバイケースなので、このブログへの投稿は控えます。しかし、何らかの方法が見つかることが多いので、必要な場合は個別にご相談ください。