認知症の高齢者を狙う不動産詐欺

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 NHK NEWS WEBの記事から引用します。

知らないうちにアパートの1室を~認知症高齢者狙う不動産詐欺

80代の女性の口座から300万円がどこかに振り込まれていました。
「何に使ったんだろう」
息子が不審に思って調べたところ、ある会社からアパートの1室を購入していたことがわかりました。
でも女性はそのことを一切覚えていません。
認知症だったからです。

~中略~

なぜ母親は不動産販売会社に300万円を支払ったのか。
息子が会社に電話で問い合わせると、担当者は丁寧な語り口でこう言ったそうです。
「お母様には神奈川県相模原市にあるアパートの1室を購入してもらいました。ご本人も納得して契約したので問題のない取り引きですが何か?」
電話を切ってその物件を調べると、購入していたのは築30年以上のアパートの1部屋。
母親に再度「不動産を買ったのか」と聞いても、「何の話?買ってないよ」という反応でした。
息子
「担当者に『母は何を買ったんですか』と聞いたら、『区分マンションです』と。母はもともと投資に興味はなかったし、契約を交わしたことすら何も覚えていない。認知症がここまで進行していたのかと驚き、複雑な心境でした」
購入したのは1部屋の「55分の6」
自宅には契約書も担当者の名刺も残っておらず、どうすればいいのか困って弁護士の法律相談に行ったところ、契約書類がないなら取り寄せればいいとアドバイスを受けました。
会社側に「契約書」や「重要事項説明書」を送るよう強く要求すると、見慣れた母親の字で書かれた署名や印鑑が押された書類が届きました。
ただそこには思いもよらないことが書かれていたのです。
「55分の6」
母親が300万円で購入したのはアパートの1室ではなく、55分の6(約11%)の持ち分だけだったのです。
同じアパートのほかの部屋は、1部屋およそ300万円で販売されています。
つまり所有権の一部を相場の10倍ほどで売りつけられた疑いがあるのです。
~以下、略~

NHK NEWS WEB

 これは収益用区分マンションを利用した詐欺事犯です。資産があり、認知症を患った高齢者を探し出し、言葉巧みに話して相場の10倍の金額で購入させるという手口です。

 取引を行った不動産会社の関係者は既に逮捕されましたが、許せる話ではありません。このような一部の不心得者が不動産業界全体のイメージをダウンさせています。

 問題は、簡単に行える救済策が見当たらないことです。売却には持分を有する全ての方の承認が必要であるところ、他の区分所有者が認知症を患っている状況では売却できません。

換価する方法はありますが...

 持分権者の最低一人が共有物分割請求訴訟を提起し、最終的には不動産競売にかけて換価処分することが考えられます。ただし、訴訟を提起するためには訴訟提起者が認知症を患っていないことが必要です。他の持分権者(訴訟を提起される側)は認知症を患っていても差し支えありあせん。

 持分権者の全員が認知症を患っている場合は、持分権者の誰かがお亡くなりになるのを待つしかありません。その後、持分権の相続人が所有権移転登記(持分権の移転登記)を行った上で訴訟を提起することになります。

 ただし、売却価格はかなり低廉になることが想定され、相場より安くなることは避けられません。また、入札者がいなかった場合は競売が不成立になることがあります。

 競売が成立したとしても300万円が30万円未満になることは十分に考えられ、その他に裁判費用が発生します。手元に残るお金はわずかですが、この不動産と縁を切ることができます。縁を切らないと固都税の支払いを求められますし、賃借人がいる場合は設備の修繕費等が必要です。

 不法行為(詐欺)による損害賠償請求権を行使することも一応は考えられますが、訴訟提起者が認知症であることが問題です。それに不動産会社が倒産すれば請求しても無意味です。

 結局は、親族や周囲の方が高齢者のサポートを行い、詐欺に遭わない手立てを考えるしかないのかもしれません。