駅近の古い中古マンションはお買い得か

 新築、中古を問わず区分マンションの価格が急騰しています。主な原因は資材価格および人件費の急騰です。中古区分マンションも例外ではありません。リフォームを行うための資材価格および人件費が高騰しているため、販売価格が上昇しています。

 東京都23区内にある築10年以内、駅近のファミリー向け中古区分マンションを探すと1億円を超える物件が増えています。

 築年数43年を超えた、いわゆる旧耐震の物件を探すと数千万円前後の物件が多くなります。東京都23区内で駅近で買い物に便利な物件を探すと、新築物件よりも築古の物件の方が多いです。このため、このような中古の区分マンションの購入はお買い得であるかについて、質問を受けることがあります。

 今日は古い区分マンションの問題点について書きます。

1.建て替え計画が具体化していることがある

 このような古い中古区分マンションにおいて注意が必要なのは、将来の建て替え計画が具体化しているかという点です。管理組合の総会において建て替えが決議された場合、住人には二つの選択肢があります。

 一つは新築する費用を支払い新築建物に居住することです。新築に要する費用は既存の建物の解体費用、建設費、新築建物を建築するための調査費、建物の設計費、その他です。金額はかなり巨額であり、3千万円~数千万円を超えることがあります。

 もう一つの選択肢は、自己の所有物件を時価で買い取るように請求することです。

 実は、建て替え計画が具体化していても、管理組合の総会決議を通過出来ないことが多いです。現在、決議の承認には組合員の5分の4以上の賛成が必要です。このハードルはかなり高いです。区分マンションを購入した方の多くは、追加で3千万円~数千万円超の費用を捻出できず、反対票を投じるからです。特に定年退職した方や無職の高齢者にはとても酷です。

 このブログ記事を書いている2024年9月の時点では5分の4以上の賛成が必要とされています。このため、管理組合の総会で立て替えが審議されても、多くの場合に否決されると考えられます。

 これでは建て替えが進まみません。そこで区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)の改正が予定されており、早ければ2024年中に改正案が国会で審議・可決されます。

 改正案が成立した場合、耐震性又は耐火性に問題がある場合は4分の3以上の賛成、大地震などの災害により被災したマンションでは3分の2以上の賛成で建て替えが認められます。建て替えの要件が緩くなるので、終の棲家として購入したい場合は要注意です。

2.間取りの設計が古い

 ファミリー向けマンションの大半にはダイニングキッチンが設けられています。しかし、築古の物件はキッチンが狭く、さらにリビングとキッチンとの間に仕切りが設けられ、使い勝手が良くないです。

 キッチンを狭くしてリビングとの間に仕切りを設けた理由は、調理の際に発生する煙がリビングに入らないようにするためと言われています。しかし、実際のところはわかりません。

 数十年前は無煙グリルが存在せず、煮炊きの際に煙が発生することが通常でした。

3.修繕積立金が徐々に上がる

 建物の老朽化が進むと修繕費用が上昇します。外壁の修繕費および塗装費用、オートロックやエレベーターがある物件ではその更新費用です。

 建物が新しい場合、これらの費用は少なくて済みます。しかし、築年数が経過するに従い、費用が多く発生するようになります。このため、古い区分マンションでは修繕積立金が次第に値上がりする傾向があります。

4.耐震化工事をしていない物件では耐震性が劣る

 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認された物件は旧耐震基準に基づき建築されています。耐震診断を行い、その結果を受けて耐震工事を行っていれば、古い物件でも耐震性に関する心配は少ないです。

 しかし、耐震診断および耐震工事には費用が発生します。このため、耐震診断や耐震工事を行っていない物件が多いので、購入を検討する際は確認をお勧めします。

5.住宅ローンが否認されやすい

 金融機関によりますが、建物が古い場合、残存価値が認められず融資が否認されやすい傾向があります。ノンバンクの中には融資に前向きなところがありますが、利率が高くなります。

6.まとめ

 古い中古区分マンションには上述した問題点があることを念頭に置き、利便性との兼ね合いをよく検討した上で購入の可否を検討することをお勧めします。