収益用不動産の購入、高利回りのみで決めるのは悪手

2025年1月20日

 遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
 今年最初の投稿です。最近、更新頻度が下がっており、申し訳なく思っています。

 収益用不動産の購入を検討している方からよく依頼されるのは「利回りが良い物件を探してほしい」というものです。よくあるのは以下のパターンです。

・東京都の目黒区および世田谷区に限定し、新耐震、駅近かつ表面利回り8%超の物件を探してほしい。
・東京都23区内または川崎市あるいは横浜市内にある表面利回り12%以上の1棟マンションを探してほしい
・東京都23区内限定で、新耐震かつ駅近で転売業者が買い付けるレベルの安い物件を紹介してほしい。

 現在、上記のパターンで物件を探すように求められてもほぼムリです。
 物件の値付けに際しては、当該エリアにおける他の収益物件の標準的な利回りと同じ利回りになる価格が設定されるからです。

 「収益用不動産を運用している友人に尋ねたら『目黒区内において表面利回り8~10%で運用している。』と言われた。必ずそのような物件があるはずだ。」等と言われる方がいらっしゃいます。しかし、そのような物件の大半は、コロナ禍以前に購入した物件と思われます。

 コロナ禍をきっかけとして需要が増加したことから収益物件の価格が急騰し、表面利回りが極端に低下しました。需要が増加した理由は以下の通りです。

・飲食業の継続を諦めた企業が売上げを出すために賃貸物件を数多く購入した。
・コロナ禍が概ね終息した後も、次のパンデミックを心配する大企業が収益物件を次々に購入した。
・円安が進んだことから外国人による収益物件の購入が増えた。

 あくまでも筆者独自の分析結果ですが、2025年1月の時点ではエリア毎に以下の表面利回りの物件が多いと考えています。半年後には変わる可能性があることをお断りしておきます。

東京都23区:城南・城西・山手線内3.5~5.5% 城北・城東5~6%、多摩6~9%(西側は高め、駅近は低め)
神奈川県東部(川崎、横浜):東横線沿線4.5~6.5%、それ以外6~8%、
埼玉県南部:6~8%、最寄り駅から徒歩20分以上は8~9%

 この表面利回りを上回る物件は、何らかの問題を抱えていることがあるので注意が必要です。
 問題を解決できないことから売主が値引きに同意し、このために表面利回りが高めになっています。

【よくある問題点】
・近くに競合する賃貸物件があるために稼働率が常に低く、改善できる見込みがない。
・「告知事項」があることから敬遠され、空室になると次の入居者がなかなか決まらない。
・建物が著しく朽廃している。
・1981(昭和56)年5月31日以前に建築確認申請された、いわゆる旧耐震の建物である。
・鉄道の線路際または踏切の近くにあり、振動および騒音が酷いので入居者が退去しやすい。
・土地権利が借地権であり、ローン審査が厳しい。
・大通りの交差点近くにあり、自動車の排気ガスが付近に滞留するので退去しやすい。
・他の賃借人とよくトラブルになる賃借人が入居している。

 中には稼働率が50%未満であり、これを解決できる目途が立たないために価格を下げている物件があります。
このような物件は満室時想定表面利回りが高いですが、うっかり購入すると運営が破綻する原因になります。

 高利回りのみを追いかけて物件を決めるのは悪手と言えます。稼働率、周囲の環境、物件の特性を勘案して決めることをお勧めします。