中古収益用不動産(賃貸マンション等、一棟)購入時の注意点(その2)
昨日の投稿では、中古収益用不動産の設備機器を確認する必要がある旨を書きました。中古の賃貸マンション1棟ものを購入する際に確認が必要なのは設備機器だけではありません。管理の体制について、よく調べておく必要があります。
物件の紹介図面に「管理条件付」と記載されている場合、管理契約の内容と管理項目、サブリース方式を採用している物件であるか、管理会社を調べる必要があります。
また、管理条件がない場合(管理会社に管理を委託していない場合)は、どの管理項目を管理会社に委託するかを予め検討しておく必要があります。
1.管理契約の内容と管理項目
管理の内容は様々です。賃料の出納、賃料の滞納が発生した場合の対応、住人からのクレーム処理、設備故障への対応、設備更新やリフォームが必要になった場合の対応、共有部分の清掃、入居・退去時の対応があります。これらの項目の中で、管理会社が行うのはどれであるかを把握しておく必要があります。
特に確認が必要なのは、設備更新やリフォームが必要になった場合の対応、および入居・退去時の対応です。退去の際には管理会社が指定したリフォーム会社以外にリフォームを発注してはいけないとか、賃借人から預かった敷金はオーナーに渡さず管理会社において保管する等の内容が、管理契約の特約事項に記載されていることがあります。
このような管理契約を承継すると入居者とのトラブルに巻き込まれる恐れがあり、オーナーが責任を問われます。管理会社指定のリフォーム会社では、リフォーム費用を相場の2~3倍に設定しているところがあり、管理会社がリベートとして何割かを徴収しているところがあります。
敷金は賃借人がオーナーに交付したものであり、本来はオーナーが預かる性質のものです。本来、敷金を預かる権限は、管理会社にはありません。
管理会社に敷金を預けた場合でも、賃借人が退去する際には敷金を返還しなければなりません。それ程多く発生する事案ではありませんが、管理会社が倒産した場合においてオーナーが管理会社から敷金を受け取っていなくても、敷金の返還義務は依然としてオーナーにあり、敷金を賃借人に返還しなければなりません。
管理契約書の中に、管理会社以外には設備更新やリフォーム工事を発注してはいけないとする特約がある場合があります。昨日の投稿に記載したエレベーターの更新やガス給湯器の更新についても、管理会社経由で他の会社に発注することが義務づけられていることがあります。
管理会社経由で設備の更新やリフォームを依頼しなければならず、しかも費用が相場の2~3倍に達する場合、本来であれば利回りが良好な物件でもオーナーの手元に残る資金はゼロ、またはマイナスになることがあります。
管理契約の中にこれらの特約がある場合は、管理会社を変更出来ないかを確認する必要があります。変更できない場合は、立地や利回りなどが良く見えてもその物件の購入は止めることをお勧めします。
2.サブリース方式を採用している物件
建物の全居室を一括して借り上げている物件です。管理業務の全てを管理会社が行い、空室が生じても賃料を支払うことが約束されていますが、最大化した賃料を受け取ることが出来ず、相場の8割程度の賃料で貸し出すことになります。
オーナーおよび管理会社の間で締結される賃貸借契約(マスターリース契約)は普通賃貸借契約とされることが多いです。普通賃貸借契約の場合、原則としてオーナー側から解約することは認められません。
賃貸借契約の特約に、契約更新時に賃料の改定(値下げ)を要求できるとか、エレベーターの更新やガス給湯器の更新は管理会社が指定する会社が実施し、費用はオーナー負担になることが記載されていることが大半です。そればかりか、外壁・共有部の内装・屋根の塗装についても数年毎に管理会社が指定する会社に発注しなければならないことが定められていることがあり、費用はオーナー負担とされていることが大半です。
物件を購入してから数年後、賃料を大幅に値下げされます。エレベーターや給湯器の更新費、外壁・内装・屋根塗装費の何割か、場合によっては5割以上がリベートとして管理会社の懐に入ります。
本来であれば利回りが良好な物件でも収支がマイナスになることが多くあり、事業用ローンを利用して購入した物件の場合はローンの返済が出来なくなります。最悪の場合、何千万円または何億円もの資産を失うことになります。
オーナーにとってこれだけのデメリットがあるのに、サブリース物件を求めるオーナーは多くいます。また、大手不動産会社経由で収益用不動産を購入する際も、サブリース契約付きの物件を勧められることが多いです。その理由は、金融機関からの融資を引き出しやすいからです。
大手不動産会社の担当者も金融機関の担当者もノルマに追われており、契約件数を上げるのに血眼になっています。サブリース契約であれば、相場の8割程度であるとはいえ賃料収入が保証されることから、金融機関は融資に前向きになります。融資が通りやすく、売買契約の成約につながるので、大手不動産会社の営業担当者はサブリース契約の物件を勧めます。
金融機関の担当者の大半は、契約書記載の特約によりオーナーが数年後に破綻しても、それはオーナーの責任であると考えています。「いざとなればオーナーから収益用物件を取り上げて競売にかければ良い。自分のノルマ達成が第一である。」と考える担当者が多いので、特段の注意が必要です。
また、将来において物件を売却する際に、サブリース形式を採用している物件の価格査定は低くなります。サブリース形式による管理を導入指定いない場合と比較すると8割程度の賃料収入しかないので、査定も8割程度になることが多いです。
将来的に売却する可能性がある場合は、サブリース方式を採用する収益用物件は購入しないことをお勧めします。
3.管理会社について
設備の更新やリフォームについては全て管理会社を通して発注する必要があるという内容の管理契約を締結させる、無理な賃下げを要求するような管理会社は利用するべきではありません。
管理会社の評判を予め調べておくことをお勧めします。大手の会社であっても、安心できません。
このブログでは再三申し上げているので、毎日お読みになられている読者の方はおわかりになると思いますが、収益用不動産の購入は「事業」なので、消費者としての保護を受けることは出来ません。何らかのトラブルが発生しても、それが調査や経験の不足が原因であれば、購入された方の自己責任になります。
詐欺行為であることが明白で、売主や不動産仲介会社の責任を追及する際は、相手が大手不動産会社であっても訴訟により解決することになります。
収益不動産を購入したことから訴訟沙汰に巻き込まれるのでは目も当てられません。管理会社が大手であっても警戒を怠らない必要があります。
インターネットで社名を検索すれば会社概要はわかりますし、地元における評判もわかることがあります。
管理業務を安値で引き受けるとか、仲介手数料を半値にする等と謳う会社も信用できません。経営状態が悪化しているために手数料の引き下げをしていることが多いです。
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