友人や知人に、賃貸物件の連帯保証人の引き受けを依頼された場合
賃貸物件を借りたい場合、物件を借りる際には連帯保証人が必要であるということで、連帯保証人の引き受けを依頼されることがあります。
賃貸物件を借りたい方が友人を連れて私の会社に来られ、連れてきた友人を連帯保証人にすると言われることがあります。連帯保証人の引き受けを依頼された友人は、連帯保証人になった際に負担する責任の内容を理解していないことが多く、説明に苦労します。
賃貸物件の連帯保証人が負う責任
賃貸物件の連帯保証人は、賃借人が家賃を滞納した場合に滞納した賃料の支払を求められるだけではありません。また、最初の契約期間(都区部の住宅の場合は通常2年)のみ責任を果たせば良いわけではありません。
これらを知らない方はとても多いです。さらに、「連帯保証人は簡単に辞められる」と勘違いしている方は非常に多いです。詳しくはこちらのページを参照願います。
連帯保証人に求められるのは、滞納家賃の肩代わりだけではありません。令和2年4月以降は責任範囲に上限がありますが、基本的に賃借人が賃貸人、または同じ建物における他の居住者に与えた損害を全て賠償しなければなりません。
賃借人が故意または過失により設備を壊した場合における修繕費、室内で水漏れが生じ、同じフロアまたは階下の部屋を水浸しにした場合の修繕・補償費用、火災を発生させてしまった場合の補償費用が発生します。
(火災を発生させた場合に、失火責任法が免責するのは賃貸人です。賃借人が賃貸人に対する明け渡し義務を果たせないことに対する賠償責任は、失火責任法では免責されないと解されていることから責任を問われます。)
これらの中には、賃借人が損害保険に加入することによりカバーできるものが多いので、連帯保証人になられる場合には損害保険の加入を賃借人に促すことをお勧めします。ただし、保険でカバーされる限度額を超えた場合は連帯保証人の負担になります。
また、万が一賃借人が建物内で死亡したた場合の特殊清掃費用、および事故物件にした場合はその損害について負担する義務が生じます。
賃借人が死亡した場合には、室内の家財を片付ける費用、および原状回復の費用が発生しますが、これも連帯保証人に支払義務が生じます。「親族が支払うべき」と思われるかもしれませんが、連帯保証人がいる場合は、賃貸人(オーナー)は連帯保証人に費用を請求できますし、連帯保証人は費用を支払う義務があります。
民法が改正されたことを知らずに不動産会社に来られる方が多い
賃貸物件を事故物件にしてしまった場合における損害賠償の金額は莫大であり、連帯保証人が破産宣告を受ける事態が多発しています。このため、令和2年4月1日施行の改正民法により、第三者が連帯保証人を引き受けるための要件がとても厳しくなりました。
つまり連帯保証の極度額を設け、連帯保証を実行しなければならない場合に支払う金額の上限を定めること、および極度額を賃貸借契約書に記載して公正証書を作成することが義務づけられました。しかし、民法の改正を知らずに不動産会社に来られる方はとても多いです。
通常、都区部の物件における極度額は賃料の2年分相当額に設定されることが多く、かなり高額になります。このことと公正証書の作成が必要であることを知り、入居申込書を提出する時点で連帯保証人の引き受けを拒む方が多くいらっしゃいます。
最終的には、家賃保証会社に保証してもらうパターンが多いです。
友人や知人に、賃貸物件の連帯保証人になるように頼まれたらどうするか
民法の改正により極度額が明示されることになり、連帯保証人が無限に責任を負う必要は無くなりました。しかし、連帯保証契約を締結する際に、連帯保証人の責任は非常に重いことが、予め提示されることになりました。余程の理由がなければ、連帯保証人の引き受けを安易に行うべきではないと言えます。
もし、友人や知人から賃貸物件の連帯保証人を引き受けて欲しいと頼まれた場合は、民法の改正により最大で2年分の家賃相当額の支払に応じる旨を賃貸借契約書に記載しなければならず、さらに公正証書の作成が義務づけられたことを説明し、丁重にお断りするのが賢明であると思います。
賃借人は保証料を家賃保証会社に支払う必要がありますが、連帯保証人の責任が重いことを説明し、納得していただく必要があると思います。保証会社の利用、および損害保険の加入を勧めていただき、連帯保証人の引き受けはお断りするのが得策であると思います。
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