収益用不動産のオーナーは、宅地建物取引士の資格を取得するべきか

標題の内容について、オーナー様からよく尋ねられます。

ご存じの方が多いと思いますが、不動産賃貸業は不動産会社でなくても開業できます。個人のオーナーが、保有する住宅を賃貸物件として貸し出す際に、資格や免許は必要ありません。

1棟ものの賃貸マンションを所有している方におかれては、資格や免許がなくても不動産会社に管理を委託すれば大家業は成立します。このため、大半のオーナーは宅地建物取引業の免許や宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士などの資格を取得していないのが現状です。

収益用不動産に関するセミナーなどでも、これらの資格や免許の取得は必要ないとしているところが大半です。

しかし、大家業を長年行っていると、入居者との様々なトラブルに遭遇します。対応を不動産会社に任せている場合でも、その対応が適切なのか、違法な対応をしていないか等が気になるようになります。

例えば、家賃を長期滞納している入居者がいる場合、管理を委託している不動産会社が悪質である場合には鍵を交換して入室できないようにします。さらに、室内の家財を勝手に搬出し、廃棄する不動産会社が未だにあります。

また、入居者の退去に際し、原状回復費として全てのクロスの張り替え費用、ガス給湯器・エアコンの交換費用を請求する不動産会社があります。居住者が騒ぎ出して宅建協会や都道府県庁に持ち込まれ、問題化されることがあります。状況により、オーナーも責任を問われることがあります。

トラブルに遭遇したことをきっかけとして宅地建物取引士の資格を取得し、最終的には宅地建物取引業の免許を取得するオーナー様がいらっしゃいます。

宅地建物取引士の資格を取得されたオーナー様は、管理や入居者募集を委託している不動産会社の対応が妥当なのか監視し、必要に応じて指導しています。オーナーが宅地建物取引士の資格を持っていると、管理の委託先である不動産会社が無茶な振る舞いをすることは少なくなるようです。

また、宅地建物取引業の免許を取得して開業し、入居者募集を自社で行うことにしたオーナー様がいらっしゃいます。家賃や敷金、礼金を自分で決めて募集し、空室に関する物件情報を自社でレインズに掲載しています。

宅地建物取引業の免許を取得すると、市場価格より安く売られている収益用不動産を購入し、リノベーションと入居者募集とを行った後に利益を乗せて売却することが法的に許されます。

さらに、入居者が新しい住宅の購入を希望された際に売買物件を紹介し、成約した場合に仲介手数料を得ることが出来ます。いずれの行為も、宅地建物取引業の免許がないと法的に認められません。免許を取得することなくこれらの行為を行うと処罰されます。

単に収益用不動産を保有して大家業を営む場合は、宅地建物取引士の資格や宅地建物取引業の免許を取得する必要は無いと言えます。しかし、これらの資格や免許を取得することにより、大家業の他にビジネスを大幅に拡張できるようになります。