初心者が買ってはいけない収益用不動産(その1)

不動産投資に関し、「何を購入したら良いのかがわからない」という相談を受けることがあります。

この相談に対する回答は、かなり難しいです。質問者が置かれている状況は異なりますし、不動産投資を生業として行うのか、副業と位置づけて行うのかにもより変わります。手持ち資金の金額にもよりますので、一概に申し上げることが出来ないのです。

しかし、「不動産投資の初心者は購入するべきではない」と明確に言える物件がいくつかあります。

1.家賃を滞納し続ける居住者がいる物件
賃料を滞納し続けている居住者が存在する物件は、購入を控えるのが賢明です。滞納者に関する情報は販売図面およびレントロール(賃貸借条件の一覧表)には記載されていないので、売主または不動産会社に直接聞き出すしかありません。

「購入後に追い出せば良い。」と思われるかもしれませんが、普通賃貸借契約は、余程の事情が無い限り賃貸人側から解約できません。賃借人が家賃を滞納しているという理由により賃貸人が賃貸借契約を解約したい場合は裁判を提起し、賃貸借契約の解約を認める判決を得るしかありません。

ところが、現在はコロナ禍です。裁判所の裁判手続きが遅延しており、訴状が受理されて判決を得られるまでに半年近くを要することが増えています。強制執行を行う場合は、更に2~3か月を要することがあります。

さらに賃料を滞納している原因がコロナ禍による失業であり、滞納期間が3か月程度の場合は、裁判所書記官の判断により訴状を受理してもらえないことがあります。コロナ禍による失業により賃料を滞納している場合は、賃貸人は容易に退去を迫れない状況です。

家賃滞納の原因がコロナ禍による失業ではない場合でも、裁判が長期化しているので、本来であれば得られるはずの賃料収入が長期間にわたり入らないことになります。

いずれにせよ、賃料を滞納している賃借人がいる物件は購入しないのが賢明です。

2.都心にある単身者居住用のワンルーム、または1Kの区分・1棟もののマンション
今回のコロナ禍により失業し、居住者の多くが退去してしまったところが多いです。コロナ禍が収束しない限り、空室はなかなか埋まらないと思います。

最初の収益用不動産であるとして、ワンルームまたは1Kの区分マンションを1部屋だけ購入する方がいらっしゃいますが、空室になると次の入居者が入居するまで家賃収入がゼロになります。現況が空室でも管理費および修繕積立金のい支払が必要になりますし、事業用ローンを利用して購入した場合は、空室のために無収入であってもローンの返済をしなければなりません。

意外に知られていないのですが、ワンルームまたは1Kの区分マンションを1部屋だけ購入したことが原因で破産宣告を受ける方は多いです。

3.新築の1棟マンション
新築であることから設備の故障が発生しにくく、入居者の評判が良いとして、最初に購入する収益用不動産を新築の1棟マンションにしてしまう方がいらっしゃいます。しかし、新築物件は見極めがかなり難しいので、収益用不動産を初めて購入される方は避けるのが賢明です。知識と経験を十分に備えてから購入することをお勧めします。

完成後、満室の状態で売り出されているマンションの場合、賃料を相場よりもかなり高く設定し、いわゆる「サクラ」を入居させている物件があります。利回りを高く見せるために、このような悪質な行為を行う業者が存在します。

サクラが入居している物件では1~3か月程度で入居者が一斉に退去し、空室が急増します。その後に入居者を募る場合は、家賃を大幅に値下げするしかありません。

設定されている賃料が、付近の相場賃料と比較して適正であるかを十分に調査する必要があります。

さらに新築物件の固定資産税および都市計画税は極めて高額です。設備の故障が発生しにくいことから抑えられる維持費を大きく上回る税額になることがあります。

最初に想定していたキャッシュフローの通りにならないことがよくあり、最悪の場合には破産に追い込まれることがあります。

4.建物の外壁に大きなクラックがある物件(RC、SRC造の場合)
外壁に大きなクラックがある物件は、耐震性に問題があります。修繕費がかさみますし、将来において買い替えを行う際にも低く評価されます。

クラックのある物件は耐震性に問題があるという情報は、入居先を探されている方にも広く知れ渡っています。賃貸物件の内見を行う際に、外壁におけるクラックの有無を確認される方が増えています。クラックが大きい場合は入居してもらえません。

5.いわゆる魔改造をした物件
建築確認申請後に、違法な増築や改造をした物件には手を出すべきではありません。屋上に1部屋を追加して設置した物件がありますが、役所から取り壊し命令が発令されることが考えられます。

また、ほとんどの金融機関は、違法改造を施した物件に対する融資を厳しく制限しています。貸してくれるのは利率が高いノンバンクの一部でしょう。融資の利率が高いと、採算割れを起こすことがあります。これでは困ります。

※明日の投稿に続きます。