太陽光発電事業は曲がり角?
コロナ禍になる少し前までは、「太陽光発電に利用できる広大な敷地を探しているので紹介して欲しい」との依頼が多くありました。現在でも依頼はありますが、かなり少なくなっています。
朝日新聞記事によると、山梨県は太陽光発電施設を設けるために森林伐採を禁止するなど、規制を強化する条例を制定することを発表しました。(リンクは掲載社の都合で切れることがありますので予め御了承願います。)
その他にも岩手県遠野市などで、規制強化の動きがあります。
パネルを設置する場合に森林を伐採することがあります。広範囲に伐採すると土砂災害が発生しやすくなり、濁流が発生する原因になります。濁流が発生すると下流域における生態系が変わるなど、環境に重大な影響を及ぼすことがあります。
それに、太陽光発電施設は見栄えが良くありません。広大な敷地に灰色または黒色の太陽電池パネルが整然と並べられている光景は殺風景です。
さらに、強風が吹いた際に破損することがあります。太陽電池パネルには有害物質が含まれていることから、パネルが破損すれば土壌を汚染します。
パネルが急傾斜地に設けられている場合、崖崩れが起きるとパネルが破損して土壌を汚染します。事故が発生した場合、斜面に張り巡らされた電線には電流が流れていますから、取り除くことは困難です。
太陽電池パネルには寿命があり、経年劣化します。発電効率は年数を経ることに徐々に下がる特性がありますので、破損を免れた場合でも20~30年程度利用したら交換を検討する必要があります。経年劣化するのはパネルだけではありません。パワーコンディショナーや電線等も経年劣化します。パワーコンディショナーは10~15年程度で交換が必要になります。
太陽電池パネルにはカドミウム、セレン、鉛などの有害物質が使用されています。現在でも、有害物質を使用する産業廃棄物の処理費用は膨大です。発電効率が落ちたという理由で太陽電池パネルを交換する際の片付け費用は、年数を経る毎に莫大になります。
メンテナンス費用は立地により左右されます。地盤が軟弱であると架台が傾く、あるいは沈下して発電量が激減することがあります。このような場合は直ちに補修工事を行う必要があります。
太陽電池パネルにより発電された電力には再生可能エネルギーとしての固定価格買取制度が適用されますが、固定価格買取制度が定める期間が経過した後は、国または大手の電力会社が決める買取価格に左右されます。販路は「送電用電力網に流す」ことに限られていることから、発電所が増えれば買取価格が下がることは自明です。
買い取り価格が下がるようなことがあると、太陽電池事業者が経営危機に陥ることが想定されます。このような場合には太陽電池パネルがメンテナンスもされることなく、撤去されることもない状態で放置されることになります。放置される懸念があることも、規制強化の理由ではないかと思われます。
このビジネスは不動産に関する知識だけではなく、電気設備およびメンテナンスに関する知識が相当に必要です。さらに、地方自治体による規制強化の動きには目が離せません。
再生可能エネルギーとして期待されていたのですが、現状よりも格段に発電効率が高くなる技術が開発されない限り、太陽光発電事業にこれから参入することは、私はお勧めしません。太陽光発電は曲がり角に入りつつあると考えています。
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