前面道路が私道である土地や戸建住宅を購入する際の注意事項(その3)

セットバックに注意
建築基準法により、道路の幅員は原則として4m以上が必要であるとされています。私道の場合、建築基準法第42条第2項により、幅員4m未満でも「道路」として扱われることがあります。そして接道部分が2m以上ある土地の場合は、この土地上に建物を建築することができます。

しかし、建物を建て替える際には敷地と道路との境界を道路の中心線より後退させ、将来的には道路幅を4m取れる位置に建物を建てる必要があります。後退させなければならない敷地の部分をセットバックといいます。

幅2mの私道に面した建物を再建築する場合は、私道から1m後退させた位置を敷地と道路との境界線として再建築する必要があります。道路幅2mの私道の両側の家が再建築の際に各々1mずつ後退させれば、これらの家は幅員4mの道路に接することになります。

不動産会社を通じて土地や中古戸建住宅を購入する際には、セットバックは重要事項説明における必須説明事項なので、必ず説明を受けると思います。幅員が狭い道路に面して建つ中古戸建住宅を再建築する際には、道路から一定の距離の部分について、建物を建築出来なくなることに注意が必要です。

川や海、崖地に接する道路脇の土地
道路の向かい側が川、海、崖地の場合は、向かい側からセットバックを取れないので、セットバックの後退距離が大きくなります。例えば幅員2mの道路が川に接する場合、この道路に面した建物を再建築する際には後退距離を2m取る必要があります。セットバックに取られる面積が大きくなるので注意が必要です。

セットバックされた土地
再建築するためにセットバックを行う際は、敷地と道路との間に設ける塀も後退させる必要があります。物置などの構築物を置くことは認められません。しかし、後退させた部分と道路との間に多少の段差があっても構いませんし、舗装する義務はありません。

セットバックされた土地が直ちに道路になることはないので固定資産税等が課税される
セットバックされた土地には何も置くことが出来ませんので、活用方法がありません。固定資産税や都市計画税の支払いを拒否したくなりますが、現行法では、セットバックしただけで直ちに非課税になることはありません。

固定資産税や都市計画税が非課税になる条件
市区町村によりやや異なりますが、以下の要件を満たす場合には「公道」と見做され、非課税になります。
・同じ私道に面する全ての土地がセットバックを完了し、セットバックされた土地が地方自治体に寄付される。
・行き止まり道路ではない(公道から別の公道に繋がる)こと。
・公道と交差する部分において2m角の隅切りが設置されていること(地方自治体により要件ではない場合があります)。

「公道」になった後、当該道路について発生する補修費用は地方自治体(市区町村)が負担します。

セットバックされた敷地を地方自治体に提供して「公道」にする際の舗装費用
公道にする際に、セットバックされた部分をまとめて再舗装することがあります。費用は、地方自治体との相談になります。

防災上の観点から、地区計画などで私道の道幅を拡幅して公道に転換する事業を推進している場合は、費用の全部又は一部をを地方自治体が負担してくれることがあります。