不動産を購入する際は、公共交通機関の動向に注意

自宅、収益物件の購入を検討されている方に御注意いただきたい点があります。それは公共交通機関の動向です。

鉄道の延伸化は、良いことばかりではない
現在、高性能化された鉄道車両への置き換え、および鉄道の延伸が行われています。併せて特急・急行・快速電車停車駅の見直しなどが行われています。

私の会社がある東京の目黒では、東急目黒線が大きく変わりつつあります。現行は6両編成なのですが、近い将来に8両編成になります。これは東急電鉄の日吉駅から羽沢横浜国大駅までをつなぐ鉄道新線(相鉄・東急新横浜線)の完成に伴うものです。武蔵小杉および武蔵小山でタワーマンションが相次いで建設され、乗客の数が急増したことも8両編成にする理由のようです。

羽沢横浜国大駅から相模鉄道の西谷駅までをつなぐ新線は既に開通しています。近い将来、相模鉄道の海老名駅から西谷~新横浜~日吉~目黒と繋がることになります。東急目黒線は都営地下鉄三田線および東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道線と相互乗り入れをしていることから、これらの路線の利用者にも恩恵があります。

しかし、良い面ばかりではありません。日吉駅は目黒線の始発駅ではなくなり、途中駅になります。日吉で目黒線に乗車して都心へ通勤していた方は、着席が保証されなくなります。

また、このような長い路線が完成すると、電車の速達化が検討されます。急行停車駅であった駅が急行通過駅になる、各駅停車の運転間隔が長くなる、各駅停車では優等列車を通過待ちすることから乗車時間が長くなる等の影響が生じます。

東急目黒線も、都営地下鉄三田線、東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道線との相互乗り入れが開始される頃から急行電車が運行されるようになり、不動前・西小山・洗足・奥沢は急行通過駅になりました。これらの駅は各駅停車しか停車しなくなったことから、待ち時間が長くなりました。さらに各駅停車は急行電車の通過待ちをするようになったことから乗車時間は以前より長くなりました。今後、特急・急行電車が増発されると、待ち時間および乗車時間は現在よりも長くなることが確実です。

特急や急行が増えると、各駅停車しか停車しない駅の人気は下がります。交通が不便になることから不動産の価値は徐々に下がります。収益物件では、家賃を下げないと入居希望者が現れなくなりますし、空室が生じた際は客付けに苦労します。

逆に、特急や急行電車が停車する駅では人気が上昇し、不動産の価値も上昇します。賃貸物件における空室期間は短くなりますし、家賃の値上げも可能になります。

公共交通機関の動向を見誤ると、思わぬ高値づかみをしてしまうことがあります。不動産を購入する際は、駅からの距離だけではなく、その路線が将来的にどのようになるのかを見極める必要があります。

郊外では路線バスの動向に注意が必要
公共交通機関の動向に注意が必要なのは、大都市だけではありません。郊外では路線バスの動向に注意が必要です。新型コロナウイルス感染症のために乗客が減ったことから、バス路線の統廃合、減便等の動きがあります。

以前、私の会社が郊外で仕入れ、リフォーム後に売却した戸建住宅で問題が生じたことがあります。物件のすぐ近くにバス停があり、平日の日中における運行間隔は15~20分程度でした。ところが、バス会社が何の予告もなく減便を発表し、運行間隔を60分に変更しました。これでは自家用車を保有している方でないと購入してもらえません。物件に対する引き合いは激減し、この物件の売却には何と2年を要しました。

新型コロナウイルス感染症が終息しないことから路線バスの利用者が激減しています。バス路線の統廃合、減便、バス停の廃止、運賃の値上げを検討しているバス会社が増えており、今後は検討結果を実行するバス会社が多くなると思われます。

路線バスの減便は直前まで公表されないことが大半ですが、路線の統廃合は事前に住民の意見を求めることが多いです。路線バスの統廃合に関する計画等の情報は、役所やバス会社のホームページに掲載されることがよくあります。ホームページを随時参照する等の方法により、可能な限り情報を集めることが必要です。