賃貸マンションを分譲マンションに変更し、切り売りできるか

賃貸マンションのオーナーから相談を受けました。「賃貸マンション1棟を親から相続し、賃貸住宅経営を続けていたが、マンションの規模がかなり大きいことから維持費が莫大で手に余る。1棟を丸ごと売却したいと思ったが、立地場所の地価が高額であることから利回りが良くなく、さらに建築後35年以上を経過していることから売値をかなり安くしないと買い手が見つからない。分譲マンションに変更して切り売りし、新しい賃貸マンションを購入する費用にしたい。分譲マンションへの変更は可能か。」という内容です。

分譲マンションへの変更は可能
この場合はマンション全体に対する表題登記を行い、さらに各部屋を区分所有建物として登記することにより、分譲マンションに変更すること自体は可能です。また、土地の所有権は「敷地権」として各部屋所有者の共有に登記し直すことが一般的です。

これらの作業は土地家屋調査士が行います。建物の設計図面、建築確認申請書類等が手元にあれば、各部屋を分譲できるように登記内容を変更することを早く行えます。

なお、登記後に検討、実施が必要な項目がいくつかあります。後述しますが管理組合を結成させ、管理費及び修繕積立金を徴収することになるので、煩雑な手続きが必要になります。

登記以外に検討が必要な内容
1.現況が賃貸中である部屋の取り扱い
収益物件として売却するか、退去していただいた後にリフォームして売却するかが問題になります。

全ての部屋の居住者に退去してもらい、建物の内外をフルリノベーションすることができれば、各部屋の資産的価値は上昇し、分譲マンションとして高く売却することが可能になります。

しかし、普通賃貸借契約を締結している場合、賃貸借契約を解約することはかなり困難です。入居者が退去を拒む場合は、退去をさせることが難しいことがあります。退去に応じて貰える場合でも立退料(退去に要する費用および迷惑料)を負担しなければなりません。

2.管理組合の発足、管理規約・使用細則等の作成、管理費・修繕積立金の決定
分譲した部屋の所有者から構成される管理組合を結成してもらう必要があります。管理組合が存在しない物件では建物をだらしなく使われる傾向があり、売却する際の評価が下がります。

分譲した部屋を購入された方に対し、直ちに管理組合の理事長に就任していただくことは困難なので、管理組合を立ち上げる際には、建物全体を所有していた元のオーナーが初代理事長に就任することになると思います。

管理組合を結成する際には管理規約や使用細則などを定めなければなりません。さらに管理費及び修繕積立金の金額を各部屋毎に決め、管理組合が分譲された各部屋の所有者から毎月徴収することになります。

徴収した管理費及び修繕積立金は、管理組合名義の預金口座において管理することになります。

3.管理会社の選定
分譲前は建物のオーナーが管理会社を選定し、家賃及び共益費の出納、クレームへの対応、清掃等を任せていたと思います。しかし、分譲後における管理会社の選定は管理組合が行います。

選定された管理会社が行うのは管理費および修繕積立金の出納と督促、共有部分の清掃とメンテナンス、長期修繕計画の策定になります。

管理組合は総会を年一回開催し、収入および支出に関する説明(予算及び決算の報告)と提案された議案の審議を行います。管理の委託内容により、管理会社が総会資料の作成や総会出席者の取り纏めを行うこともあります。

まとめ
賃貸マンションを分譲マンションに変更して売却すれば、1棟ものの収益物件として売却するよりも高値で売れる可能性があります。また、半分だけを売却し、得られた資金で新しい収益物件を購入することも考えられます。

管理組合の発足等に関する手続きはかなり煩雑です。このため、分譲マンションに変更して売却するオーナーは少ないです。しかし、1棟ものの賃貸マンションを売却した場合において
・立地場所の地価(更地価格)が高額なため、利回りが低い。
・1棟を丸ごと売却すると売却価格が安くなる。
・再建築を行う場合、費用がかかりすぎる。

等の場合に、検討の余地がある売却方法であると言えます。