マンション・アパートの共有部で発生した事故について

東京ではマンションやアパートの共有部における事故が立て続けに発生しています。

4月15日には新宿区のマンション地下駐車場の天井を修理していた作業員4名が、消火設備の誤作動により噴出した二酸化炭素により死亡する事故が発生しました。

4月17日には八王子市のアパートにおける階段が崩落し、階段を歩行中であった居住者が階段を突き抜けて下の階段に落下して死亡する事故が発生しました。詳細は、昨日の投稿を参照願います。

共有部で人が死亡した場合
このような事故が起きたマンションやアパートは「事故物件」と見做されるかという問題があります。

集合住宅の共有部分において人が死亡した場合、事故物件と見做されるかについては様々な判例があります。現時点では統一された基準がないことから、判例や学説で判断するしかありません。近い将来において、国土交通省においてガイドラインを纏めるようなので、そのガイドラインの公布を待ちたいところです。

共有部において人が死亡しても、亡くなられた方が当該集合住宅の住人である場合は、その住人の部屋が事故物件になるとする見解があります。

また、亡くなられた方が当該集合住宅とは無関係の方であり、死亡した場所が共有部である場合は、事故物件とは見做さないとするのが一般的です。例えば当該集合住宅とは無関係の者が建物に侵入し、屋上から飛び降り自殺を図り、亡骸が共有部に落ちた場合です。

検証すると新宿区のマンションにおける事故が発生したマンションにおける各部屋は「事故物件」に該当せず、八王子のアパートは住人が居住していた部屋が「事故物件」と見做されることになります。

「事故物件」ではないのに事故が発生した物件である旨を告知する必要がある?
新宿区のマンションで発生した事故は、居住空間における事故ではありません。このため、このマンションにおける各部屋はいわゆる「事故物件」とは見做されません。しかし、4名が死亡したという事故の重大性が大きく報道されたことから、マンション全体は風評により相応のダメージを受けたと言えます。

確かに「事故物件」でなければ家賃を下げる必要は無く、売却時における価格にも反映される必要はありません。いわゆる「告知義務」もありません。

しかし、近い将来において事故発生の事実を知らずに入居した方がいらっしゃった場合、「知っていたら入居しなかった」として仲介した不動産会社とのトラブルになる可能性がかなり高いです。このため、このマンションの各部屋は「事故物件」ではありませんが、相応の心理的瑕疵があることから「事故が発生した旨の告知が必要」ということになります。

八王子のアパートの場合は、事故で亡くなられた方の居室が事故物件になると思われますが、他の部屋は「事故物件」ではありません。このため告知義務もありません。

しかし、階段の修理後には他室の住人がこの階段を頻繁に通過することになります。人が死亡した現場を毎日通行することになりますので、告知されずに入居した方がいらっしゃった場合、仲介した不動産会社とのトラブルになる可能性が極めて高いです。

新宿区のマンションと同様に、「事故物件」ではありませんが、「事故が発生した旨の告知が必要」ということになります。何とも言えない歯がゆさを感じますが、現状では仕方ないかもしれません。