新しい賃貸管理業登録制度に関する発表がありました

今年の6月15日より賃貸住宅の管理を行う業者の登録制度が抜本的に変わります。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律が施行されたことにより、賃貸住宅の管理を一定の戸数以上行う管理会社は、国土交通省への登録が義務づけられることになりました。

新しい賃貸管理業登録制度
1.管理戸数200戸以上の賃貸管理業者は国土交通省に登録することが必須
新しい登録制度では、管理戸数が200戸以上(将来は変更する可能性あり)の管理会社は、賃貸管理業者として国土交通省に必ず登録しなければならなくなりました。

登録せずに200戸以上の管理を受託することは、今後は違法行為と見做されます。

2.業務管理者の設置義務
登録に際しては、以下の要件を満たす「業務管理者」を置かなければならないとされています。業務管理者を置かずに200戸以上の賃貸住宅を管理することは、今後は違法行為と見做されます。

「業務管理者」の要件は以下のいずれかを満たす者とされています。

1.管理業務に関し2年以上の実務経験を持ち、国土交通大臣の認める登録証明事業による証明を受けている者
2.管理業務に関し2年以上の実務経験を持つ宅地建物取引士で、国土交通大臣が指定する管理業務に関する実務についての講習(賃貸住宅管理業業務管理者講習)を修了した者

1については、賃貸不動産経営管理士の資格を有し、業務管理者移行講習を受講した者となります。令和3年以降に賃貸不動産経営管理士の資格を取得した方は、業務管理者移行講習を受けること無く「業務管理者」と認められます。

2については、賃貸管理に関する2年以上の実務経験がある宅地建物取引士で賃貸住宅管理業業務管理者講習を受講し、修了した方となります。

賃貸不動産経営管理士は、令和3年4月21日付で国家資格になりました。資格試験は年に1回行われます。今年の試験実施要領はこちらのWEBサイトを参照願います。

現在、宅地建物取引士証の交付を受けている宅地建物取引士は全国に約52万人がいます。これに対し、全国における賃貸不動産経営管理士の資格取得者は約3万人しかいません。賃貸不動産経営管理士になるための試験は年に一回しか行われませんので、おそらく上記の2の要件による「業務管理者」を置く管理会社が圧倒的に多くなると思われます。

3.管理契約の受託前に重要事項説明を義務化
管理契約(マスターリース契約)を受託する前に、管理業務の内容及び実施内容について記載した書面(重要事項説明書)を作成し、管理を委託する方に交付して説明することが義務づけられました。

4.財産の分別管理を義務化
家賃の収受に関する内容を委託されている場合、収受した賃料を管理会社の財産と分別して管理することが義務づけられました。

5.定期報告の義務化
管理業務の内容について、管理を受託した相手方に対し定期的に報告することが義務づけられました。

施行された背景
大きな理由の一つは、マスターリース契約及びサブリース契約に関するトラブル事例が多発していることです。

ご承知のとおり、マスターリース契約では管理会社がオーナー所有の物件を一括して借受けます。オーナーは、空室が発生しても管理会社より家賃収入を得られますが、オーナーが得られる収入はマスターリース契約およびサブリース契約が締結されていない物件の7~8割程度になります。

オーナーとしては空室が発生しても家賃収入を得られ、事業用ローンによる借り入れ金で賃貸住宅経営を行う際にはローン審査を通過しやすいメリットがあります。

しかし、オーナー側からマスターリース契約を解約をすることは借地借家法により厳しく制限され、さらに景況が悪化した際には家賃の値下げを要求されることがあります。これらはオーナーにとって不利益になる内容ですが、説明しない管理会社が多いことから従来より問題とされていました。

また、オーナーの費用負担により数年~10年毎に大規模修繕を行うことや、その際には管理会社が指定するリフォーム会社(相場の倍以上の請求をするところがある)に発注しなければならないことが特約に定められているにもかかわらず、特約の内容をオーナーに説明しない管理会社があります。

新しい法律では、これらの事項は重要事項説明時における必須説明事項になりました。業務管理者を必ず置くことが定められ、一定以上の管理戸数を有する管理会社は登録が必須になりました。

賃貸管理に関するトラブルを未然に防ぐことを目的として創設された制度であると言えます。