不動産会社を新たに立ち上げることは、業界未経験でも可能か(その1)

最近、不動産会社を立ち上げたいので諸々について教えて欲しいとの相談を受けます。

「会社勤めをしていたが間もなく定年になる。退職後に不動産会社を立ち上げたい。業界経験が無いと難しいか。」という内容が多いです。また、仕事を覚えるために数ヶ月程度働かせて欲しいとの相談があります。

正直申し上げると、これから経営者になる方は、後述する宅地建物取引士の資格取得が必須になると思います。

不動産業といっても様々であり、大家業、管理業以外は宅地建物取引業免許が必要
不動産業の中で、賃貸の仲介、売買、交換、売買および交換の仲介を生業として行う場合は、宅地建物取引業免許を取得しなければなりません。オーナーとして不動産を賃貸する行為、および管理を行う行為は宅地建物取引業の範疇に含まれませんので、これらのみを専業として行う場合は、宅地建物取引業免許の取得は不要です。

しかし、売買および交換の全て、および賃貸仲介を行うためには宅地建物取引業免許を取得しなければなりません。「免許」であり「許可」ではありませんので、誰でもすぐに開業できるわけではありません。

宅地建物取引業免許を取得するためには、開設する事務所において専任となる宅地建物取引士を置かなければなりません。また、従業員が複数いる場合は、従業員5名毎に1人の割合で宅地建物取引士を置く必要があります。

この宅地建物取引士は国家資格であり、試験は毎年10月の第3日曜日に行われます。昨年はコロナ禍であることから10月および12月に試験が実施されましたが、2回に分けた理由はいわゆる「3密」を回避することにあります。コロナ禍が終息すれば、年1回の試験になります。

この試験の合格率は、全受験者の15~17%程度です。そこそこの難関であると感じるかもしれませんが、勉強する時間を確保できれば合格できる方が多い試験です。

宅地建物取引士になるための資格試験に合格した後、宅地建物取引業の免許を申請する際は、居住する都道府県において宅地建物取引士として登録し、宅地建物取引士証の交付を受ける必要があります。

このためには「2年以上の実務経験」が必要です。ただし、国土交通省が指定する機関が実施する登録実務講習を受講し、修了することにより「2年以上の実務経験があるのと同等である」と扱われ、宅地建物取引士としての登録、および宅地建物取引士証の交付を受けることが可能になります。

その後は設置要件を満たす仕様の事務所を設置し、各都道府県にある宅地建物取引業協会、または全日本不動産協会に入会し、供託金を納付すれば宅地建物取引業免許を取得できます。

これから不動産会社の経営者になる方は、宅地建物取引士の資格を取得するべき
これから不動産会社の経営者になろうとする方は、宅地建物取引士の資格を取得することをお勧めします。

ご承知の通り、社会の複雑化に伴い、法令や条例が頻繁に改正されています。これに伴い、従来からの慣習の中には不適格とされるものが出てきています。不動産の売買仲介や賃貸仲介を行う際に、経営者において法律、条例、慣習に関する最新の知識がないと、取引上の事故を招きかねません。

お客様からの信頼を得るためにも、経営者が宅地建物取引士の資格を有することは、今後は必須になると思います。

「経営者において宅地建物取引士の資格がない場合は、宅地建物取引士を雇えば良い」という考え方がありますが、経営者と雇われている方とでは物事を見る視点が異なります。

また、宅地建物取引士ではない経営者が宅地建物取引士の資格がある従業員を雇用すると、従業員が経営者に対して威張り出す等の問題が生じることがあります。

それに、何らか問題が発生した際に、経営者は的確な判断をしなければなりません。不動産業は、法律や条例をを毎日扱う仕事であると言えます。経営者が不動産に関する法律および条例を知らないことから、自ら下す判断が適法なのか違法なのかを判断出来ないのでは話になりません。

宅地建物取引士の登録、宅地建物取引士証の交付を受ければ業界未経験でも開業できるか
法律上は業界未経験であっても、設置要件を満たす事務所を設置し、各都道府県にある宅地建物取引業協会、または全日本不動産協会の会員になり、供託金を納付すれば宅地建物取引業免許を取得できます。

経営者が業界未経験でも不動産会社を切り盛りしていけるかについてですが、これは長くなるので明日投稿します。