不動産会社を新たに立ち上げることは、業界未経験でも可能か(その2)

宅地建物取引士の資格を取得し、宅地建物取引業免許を取得して不動産会社を立ち上げる場合、業界未経験であっても会社を切り盛りできるかという問題です。

いわゆる老舗と言われる不動産会社にこのことを相談すると、「どこかの不動産会社に数年程度勤務してから立ち上げないと経営に失敗する」と言われることが多いようです。

しかし、その考えは約10年前迄の話であり、どこかの不動産会社に勤めたとしても会社の経営が安定することには繋がらないと考えています。その理由は次の通りです。

「不動産会社」と一口に言っても、その内容は様々
・賃貸仲介を生業の中心とし、駅前で他店舗展開をする会社
・賃貸仲介と管理を行うが、管理に重点を置いている会社
・繁華街からやや離れた場所に事務所を構え、売買および売買仲介を専ら専業とする会社
・地域密着型で、駅から離れた住宅街で賃貸物件の元付業者として活動する会社
・新築の戸建住宅を建設し、販売する会社
・賃貸店舗および事務所の仲介を中心に営業する会社
・郊外の土地を造成し、新興住宅地を作る会社
・郊外の土地に工場、大型物流倉庫、車両基地を建設し、誘致する会社
・ファミリー向け区分マンションの売買を専業として行う会社
・1棟もののアパートやマンション等の投資用物件に関する売買を行う会社
・旅館、ホテル、ソシアルビル、ゴルフ場、展示施設などの売買を行う会社
・賃貸不動産債権を小口化し、不動産投資信託(REIT、リート)向けの金融商品として販売する会社
・任意売却案件、競売案件から不動産を買い取り、リフォームや更地化して再販する会社

その他にも多くの営業形態があります。裾野はとても広く、専門分野を定めている会社が多いです。どこかの不動産会社に勤めて経験を積んでも、全ての分野に精通することは極めて困難です。

例えば、駅前にある賃貸仲介専門の会社に数年勤めていた方が独立して不動産会社を立ち上げたとします。お客様から売買や売買仲介を依頼された際には勝手がわからず、右往左往するばかりではないかと思います。

また、不動産の売買や売買仲介、新築戸建住宅の販売に従事していた方が独立して不動産会社を立ち上げたとします。賃貸住宅のオーナーから入居者募集を依頼された際に賃料の妥当性等を尋ねられても答えに窮する事がほとんどであり、満足な対応ができないと思います。

とりあえず不動産会社を立ち上げ、知らない分野についてはその分野に明るい営業担当を雇い入れ、細かい部分を補佐してもらうことで構わないと思います。

経営者が全くの業界未経験者である場合、最初のうちは賃貸仲介の経験者、売買仲介の経験者を雇い入れ、彼らから営業スキルなどを吸収することをお勧めします。最初から人件費が発生しますが、仕方ありません。経験者をパートタイマーとして雇用する等の方法も考えられます。

資力がある方は不動産を安値で買い入れ、リフォームや更地化して再販することから始めても構わないと思います。既に1棟ものの賃貸アパートやマンションを保有している場合は、その管理を自社で行いながらスキルを取得し、賃貸仲介と管理を主な事業として行う会社に成長させることが考えられます。

営業を続けるうちに、得意分野が見えてくると思いますので、最終的にはその得意分野を専業とすることで構わないと思います。