区分マンションの管理費・修繕積立金を長期間滞納した場合

ほとんどの区分マンションにおいて、管理組合は所有者から管理費および修繕積立金を毎月徴収しています。多くの場合、徴収方法は銀行預金口座からの口座振替であると思いますが、コロナ禍が長く続いていることから振替不能になる方がいらっしゃいます。

管理費および修繕積立金の滞納が続いた場合、滞納した金額と遅延損害金の両方を管理組合から請求されます。この場合、遅延損害金の利率は約定利率に従うことになります。民法が定めている法定利率は年3%ですが、約定利率があらかじめ規定されている場合は約定利率に従うものとされています。

この約定利率ですが、利息制限法により上限が定められています(下表参照)。

元本遅延損害金の上限利率(年間)
10万円未満29.2%
10万円以上100万円未満26.28%
100万円以上21.9%
遅延損害金の上限利率(利息制限法)

ちなみに、この上限利率は店舗・事務所などの事業用物件の場合に適用されることがあります。

消費者契約法は、消費者が支払う遅延損害金の上限利率を年14.6%と定めています。このため、個人が自己居住用として所有している区分マンションでは、管理費および修繕積立金を滞納した場合における遅延損害金の約定利率を14.6%に定めているところが多くあります。

遅延損害金の利率が年14.6%の場合において請求される金額は莫大
実例で検証します。毎月支払う管理費および修繕積立金の合計が2万円の区分マンションについて考えます。

滞納期間滞納元金遅延損害金元金、遅延損害金合計
1年24万円18,980円258,980円
2年48万円73,000円553,000円
3年72万円162,060円882,060円
4年96万円286,160円1,246,160円
5年120万円445,300円1,645,300円
管理費・修繕積立金が月2万円の場合に請求される金額

5年間滞納すると、遅延損害金は44万円を超えます。この金額は2年分の元金である48万円に近い金額です。

通常、管理組合の理事は区分マンションの所有者から選ばれますが、同じ居住者であることから管理費・修繕積立金を滞納している方がいても強く請求しない、または「支払えない」と回答されると引き下がることがあるようです。

特に理事が輪番制で選出される場合、事なかれ主義に陥ることがあるようです。請求を拒否する居住者に対応することなく次の理事に引き継ぎ、結果として滞納を長期化させてしまうことがあります。

滞納が長期間に及ぶと莫大な請求額になり、もはや所有者において元金・遅延損害金の合計額を支払えないことがあります。やがて管理組合の総会等で問題になり、滞納が始まってから何年も経過した後に対応することがよくあります。

区分所有権を売却してもらい、回収する
所有者が元金と遅延損害金の合計額を支払えない場合、区分所有権を差押えた上で任意売却手続きまたは不動産競売にかけることがよく行われます。

この場合、最終的に売却された代金から管理費・修繕積立金の元金と遅延損害金の合計額、競売にかけた場合は裁判費用を差し引き、残額を区分所有権者に渡すことになります。