緊急事態宣言を奇貨とする飲食店イジメにはうんざり

※昨日の続きです。
 本日の投稿は、政治および政策に関する内容を含みます。異論があることは百も承知です。この投稿ではコメント欄を設けません。反論をお送りいただいても返信しませんので、あらかじめ御了承願います。 

 東京都では、酒を出す飲食店に対するイジメが常軌を逸しています。政府が酒問屋に対し、飲食店への酒の出荷を止めるように要請しました。さらに、金融機関(銀行協会)に対し、融資を中止するように要請しました。これらの要請は撤回されましたが、正気の沙汰ではありません。

 国が酒の出荷停止や金融機関に対する融資引き上げを要請することは、実質的に公権力を用いて営業を強制的に停止させるものです。

 現在、緊急事態宣言による要請に反して酒を出す飲食店の多くは、いわゆる大規模チェーン直営店や大手のフランチャイズ店ではありません。要請に従い酒の提供を止めている飲食店と比較すると経営状態が極めて悪化しているところが大半です。

 緊急事態宣言が繰り返して発出されたため、飲食店には経済的な余力がありません。酒を提供する飲食店は、廃業や倒産を避けるために仕方なく酒を出しています。補償をすることなく公権力を用いて営業を強制的に停止させた場合、特に融資を止められた飲食店はほぼ確実に廃業または倒産します。

 満足な休業補償を行うことなくこれらの施策を国家が行うことは、国家が恣意的に飲食店の廃業または倒産を強制しているのと同じです。

 「悪徳店主が自分の利益を得るために、要請に反して酒を出している。お上が悪徳店主を懲らしめる。」という図式で捉え、世論がこれを支持すると考えているのであれば、甚だしい勘違いです。要請に反して酒を出す飲食店が置かれている状況に対する理解が不足しています。

 それに、これらの強引な施策を行っても新型コロナウイルス感染症の感染拡大停止に寄与するとはとても思えません。飲食店では感染対策が進みました。このため、現在では感染経路の多くは職場内、医療福祉施設および家庭内であり、飲食店において感染する事例は全体の1割に満たないと言われています。
 →出典(東海テレビ)(リンク先は掲載社の都合により削除されることがあります。)

 1割未満の感染要因を除去するために、国家が公権力を用いて飲食店の営業を強制的に停止させるのが妥当かが問題になりますが、都内の酒を出す飲食店を一斉に廃業、倒産させた場合に経済に与える影響は極めて甚大です。よって、妥当とは思えません。

悪影響は、飲食店に留まらない
 飲食店が倒産・廃業した場合に、周囲がどれだけの影響を受けるかについて書きます。

1.従業員の失業により家賃の滞納が発生し、ホームレスを増加させる
 飲食店の従業員にはシェフ、コック、板前、ウエイター、ウエイトレス等があります。シェフ、コック、板前等のいわゆる「料理人」は経験及び特殊技能を有する職種です。飲食業界から他業種へ転職させることは極めて困難です。

 ウエイター、ウエイトレスは常に接客をしていることから、接客業であれば転職への道があるように思えます。しかし、コロナ禍による不況の進行により、新規雇用を受け入れられる企業は少ないです。

 解雇された従業員は無収入になります。雇用保険が適用されている間は、家賃を支払える方が多いです。しかし、雇用保険には期限があります。再就職できない期間が長引いた場合には居住している賃貸住宅における家賃を滞納することにつながります。家賃滞納が続いた場合、賃借人は賃貸住宅から退去させられます。

 令和2年4月に行われた民法改正により、大半の賃貸物件において家賃保証会社による審査が必要になりました。家賃の滞納により退去させられた場合、その方の滞納家賃に関する情報は家賃保証会社において共有され、新たな賃貸物件を探して入居したくても断られることに繋がります。多くのホームレスを生み出すことになりかねません。 

2.商品を納入する業者の資金繰りが悪化する
 酒を納品している業者だけにとどまらず、食材や資材を納品する業者も納品先を失います。納入業者だけではありません。食材の生産者も大きな経済的なダメージを受けます。

3.賃貸店舗のオーナー、従業員が居住していた賃貸住宅のオーナー等が大打撃を受ける
 店舗や賃貸住宅のオーナーは全て富裕層であるという認識は過去のものであり、現在は必ずしもあてはまりません。金融機関から事業用ローンによる融資を受けて賃貸店舗や賃貸住宅を購入し、賃借人に貸し出しているオーナーが多くいます。

 家賃の滞納が増加すると事業用ローンの返済ができなくなります。するとオーナーは破産宣告を受け、賃貸物件が任意売却または競売により安く売却されます。

 賃貸物件が競売にかけられると、抵当権の設定状況によりその建物内に居住する賃借人が強制的に退去させられることがあります。この場合、退去に伴う補償金が支払われるとは限りません。敷金も戻らないことがあります。賃借人は著しい迷惑を被ります。