不動産会社を利用せずに不動産売買契約を締結することの是非
今日は、長年お付き合いしている友人や知り合い等から「戸建住宅(またはマンション)を購入して欲しい。不動産会社に仲介を依頼すると高額の仲介手数料が発生するので不動産会社を利用しないで契約したい。」と言われ、不動産会社を介在させることなく売買契約を締結した際に起きる問題点を書きます。
不動産売買における仲介手数料は、物件価格の3%に6万円を加算し、さらに消費税を加算した金額になります(税抜価格が400万円を超える物件)。5,000万円の戸建住宅を購入する際の仲介手数料は171万6千円であり、決して安いとは言えません。このため、親しい方同士で不動産売買を行う際には、仲介手数料を節約したい衝動に駆られ、不動産会社を介在させることなく売買契約を締結しようとする方がいます。
不動産会社を介在させずに売買契約を締結した際に発生する問題
1.売買価格が相場に見合う価格なのかがわからない
売買を行う不動産会社に勤務していた方、または不動産鑑定士でなければ価格査定は困難です。土地については指標として公示地価や相続税路線価がありますが、これらの指標を実際に当てはめることが妥当ではない土地があります。
例えば、いわゆる不整形地や傾斜地です。不整形地の場合は、土地の面積が広くてもそれに見合う広さの建物を建築できないことがあります。また、傾斜地の場合は建物を再建築する際に擁壁工事が必要になることが大半ですが、工事費は高額になることがよくあります。このような土地の査定は減額されることになりますが、不動産業に携わらない方が査定をすることは困難です。
2.物件が抱える危険性がわかりにくい
不動産の場所が土砂災害危険区域等の災害危険区域内であることがあります。売買契約に不動産会社が仲介する場合、これらの危険区域内にあるかをハザードマップを示しながら説明することが義務づけられており、発生することが懸念される災害の内容、および危険性について説明します。
これらの危険性に関する情報はあらかじめ知っておくことが必要ですが、不動産会社が仲介しない売買契約では説明されないことから、危険性の事前把握が困難になります。
3.建築禁止、または再建築不可の土地であっても、見抜けない
いわゆる敷地延長型の旗竿地では、旗竿の部分における幅員が2m以上ないと建物の建築が許可されません。
また、道路から敷地に行く際に第三者が所有する土地を通過しなければならない場合も建物の建築が許可されません。これらの土地に建物が建っている場合、再建築は認められません。
また、前述した危険地域に指定されている土地では地方自治体が定める条例により建物の建築が認められないことがあります。
不動産会社を利用せず、個人間で土地の売買を行うと、建築不可または再建築不可の土地を購入してしまうことになりかねません。
4.住宅ローンを組めない
住宅ローンを申し込める物件は、不動産会社が仲介した物件に限定している金融機関がほとんどです。
不動産会社では売買の対象となる物件に適用される法令及び条例、物件に関する注意事項、物件の状態などを精査し、重要事項説明書を作成します。
不動産会社を介在させない、知り合い同士の売買では物件の状態を把握できる重要事項説明書が作成されないので、金融機関が物件の担保価値を算出することが困難です。
住宅ローンを利用するのであれば、取引に不動産会社を介在させることは不可欠です。
5.危険な内容が登記されていても見抜けない
例えば「所有権移転仮登記」等の危険な登記があります。この他に「処分禁止の仮処分」「所有権移転請求権仮登記」「条件付所有権移転仮登記」という危険な登記があります。
この種の登記がある物件は、所有権の帰属先を巡る裁判が提起されているか、既に譲渡先が決まっていることを示す登記です。いかなる場合でも購入してはいけません。詳しくはこちらを参照願います。
不動産会社を取引に介在させないと危険な登記を見落としてしまい、重大な悲劇を招くことがあります。
6.売主が登記に協力しないことがあり、二重譲渡をされる危険がある
抵当権や根抵当権が設定されている場合、現所有者が債務を弁済しないと抵当権や根抵当権を抹消することができません。不動産会社が仲介する場合は、抵当権または根抵当権を確実に抹消できない限り、売買契約の締結および決済をしません。
しかし、不動産会社が介在しない場合には買主が売主に代金を支払ったにもかかわらず、売主が代金を抵当権者に渡さないことがあります。結果として抵当権または根抵当権が抹消されず、所有権移転も行われずに放置されます。
この状況はとても危険です。売主が不動産を二重譲渡することが想定されるからです。不動産が二重譲渡された場合は、先に登記を備えた方が確定的に所有権を取得します。先に代金を支払った場合でも、登記を備えない限り、不動産の所有権を得ることが出来ません。そればかりか売主が行方不明になった場合、支払った代金を取り戻すことは非常に困難です。
まとめ
親しい方同士で不動産売買を行う場合でも、取引の安全を図るために不動産会社を介在させるべきです。
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