入居希望者が家賃の値下げやフリーレントを要求した場合(オーナー様向け)
賃貸物件の内見を行い、入居が申し込まれる時点になると、入居検討中の方から様々な要望が出ることが多いです。要望の内容は様々であり、応じることが得策になる場合がありますが、得策にならない場合があります。
今日は、このあたりを整理して説明します。
応じてあげる方が入居促進につながる要望の例
・鍵の交換をするのであれば、安全性が高いディンプルキーにして欲しい
・「設備」として備え付けられているガステーブルを新品にして欲しい
・「設備」として取り付けられている室内の照明器具を新品にして欲しい
・ハウスクリーニングをしていないようなので、ハウスクリーニングをして欲しい
・壁クロスの変色が著しい箇所があるので、変色箇所を貼りかえて欲しい
上に例示した要望は比較的軽微であり、オーナー様における支出が少ない内容です。相談があった際には対応してあげることが得策であることが多いです。
応じるべきかをよく考える必要がある要望の例
・敷金の減額
・礼金の免除
・壁クロスの全面貼りかえ
敷金および礼金の減額を要望される入居希望者が多いです。これらを徴収するべきか、徴収する場合にはその金額をいくらにするべきかは地域により異なります。
東京都区内の場合、いわゆる「下町」と呼ばれるエリアでは敷金および礼金を徴収しない物件が多いです。しかし、高級住宅街におけるハイグレードの物件では敷金を家賃2か月分相当額、礼金を家賃1か月分相当額に設定しているところが多いです。
敷金および礼金を徴収していない物件から引っ越してくる方が高級住宅街のハイグレード物件に入居したいと考えている場合に、敷金ゼロおよび礼金ゼロを要望することがよくあります。
オーナー様におかれては、賃貸物件の所在地およびグレードから敷金および礼金の相場を確認する必要があります。不動産会社に相談した場合、不動産会社としては敷金および礼金が安ければ客付けが容易になるので敷金および礼金の減額または無料にすることを提案されることがあります。このため、不動産会社に相談するだけではなく、オーナー様においても自ら調べることをお勧めします。
具体的にはインターネットのポータルサイトで物件の近くにある賃貸物件において、敷金および礼金が家賃の何ヶ月分に設定されているかを調べます。
壁クロスについては、変色や汚れが酷い箇所のみを部分的に貼り替えることを逆に提案して構わないと思います。全般的に退色または変色している場合を除き、全面的な貼り替えをする必要は無いことが大半です。
空室期間が長期にわたる物件等でなければ応じる必要が無いと思われる要望の例
・家賃および共益費の値下げ
・フリーレント
家賃および共益費の値下げは、収益用不動産の利回りを低下させるだけではなく、物件の価値を下げることに直結します。賃貸アパート、賃貸マンションのような収益用不動産の「価値」は利回りで決まります。利回りが良好な物件は高額で売買されますが、利回りが低い物件は安値で売買されます。
また、一室について家賃を値下げしたことが他室の居住者に知られると、更新の際に家賃の値下げを要求されることにつながります。
特に金融機関からの融資により収益用不動産を購入している場合は、家賃の値下げ要求に屈したことにより金融機関への返済が滞ることがあり得ます。
フリーレントは、実質的に家賃の値下げです。入居開始後2か月間をフリーレントにした場合、入居開始から1年の間に得られる賃料収入は10か月分です。
2÷12×100=16.6 何と16.6%もの賃料値引きに応じたのと同じです。
家賃・共益費の値下げ、およびフリーレントの要望には、空室期間が長期化し、どうしても早期に入居者を決めたい場合には応じることが考えられますが、可能であれば、応じないことをお勧めします。
応じる必要がないと思われる要望の例
・トイレの便器、浴槽などの新品交換(著しい汚れや破損・故障がある場合を除く)
入居先を探している方の中には、このような要望をされる方がたまにいます。基本的に応じる必要はありません。
「要望に応じてくれないなら他の物件にします。」と言われるかもしれませんが、お断りするのが得策になることが多いです。入居を促進するためとはいえ、何十万円もかけて不要な工事を行うことはコスト的に見合わないからです。
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