収益用不動産を購入する際における注意点(その3、特徴、属性、サクラ)

収益用不動産を購入する際には、年間の賃料収入や利回りだけではなく、建物の特徴や賃借人の属性についても注意する必要があります。新築物件の場合でも入居者を募集し、8割以上を入居済にした状態にした上で売り出すことがありますので、中古物件の場合だけではなく新築物件を購入候補としている場合も確認するべきです。

年間賃料収入、利回りについて述べて参りましたが、「物件の特徴」および「賃借人の属性」についてもチェックする必要があります。また、いわゆる「サクラ」を用意して「満室である」と偽装している物件がありますので注意する必要があります。

物件の特徴について

レントロールを見ると、入居者の属性が偏っている物件や特徴がある物件があります。偏りがある物件でも、それが利益の拡大に繋がることがあります。プラス方向に作用する要素であれば構わないことになります。

収益の拡大に繋がると思われる例
・女性専用の物件

・物件近くの大学に通う学生が大半

・物件に近い工場に勤務する方が大半

・いくつかの部屋が「会社の寮」として借り上げられている
 賃料が滞納される可能性が低い

収益の拡大に、ひょっとしたらマイナスかもしれない例
・飲食店や物販店舗が1階に併設されている
 臭いや煙が発生することが多いので、敬遠されがち

・高齢者が多い物件
 孤独死されると事故物件扱いになるので何らかの対策が必要

・生活保護を受けている方が多い物件
 支給される賃料の上限が決められているので、家賃を値上げしにくい
 生命に関わる病気を抱えている方が多く、孤独死されると事故物件扱いになる
 賃料を役所等から直接振込(代理納付)される場合は、滞納の心配が無いのでプラス要素

・外国人留学生が多い物件
 外国人留学生の中には突然、家財の大半を持ち出して行方不明になり、賃料を滞納する方がいる 
 (外国人留学生が多いマンションの管理会社の方から直接聞いた話)

・ペットの飼育を許可している物件
 退去後のリフォーム費がかかる。預り敷金では足りないことがある

・ハトやカラスをバルコニーから招き入れる性癖のある方がいる物件
 建物の外壁および室内が汚れ、不衛生。害虫の発生、悪臭等の原因になる。
 長期間にわたると建物の損傷を招く。

賃借人の属性について

以前の投稿に書きましたが、家賃を滞納している方を法的手続きにより退去させる場合には半年近くを要し、かつ多額の費用がかかります。連帯保証人がいる場合でも、支払を拒否されることが増えている社会情勢です。家賃を滞納されている方が多い物件は避けるべきです。

各々の賃借人に連帯保証人がいるか、いない場合は賃貸保証会社による保証契約が締結されているかについて、確認する必要があります。
連帯保証人をつけず、さらに賃貸保証会社による保証契約が締結されていない賃借人が賃料を滞納した場合は、この賃借人から賃料を徴収する方法がありません。このような方が多い物件の購入は避けるのが無難です。

賃借人の中に粗暴な方がいることが発覚した物件も、購入を避けるのが無難です。毎月のように他室の住人とトラブルを起こす、酒に酔って夜中に大声を出す等の住人がいると、入居者が退去する原因になります。
空室だらけになると「トラブルが発生する物件」ということで客付け仲介を行う不動産会社に警戒され、入居者がなかなか決まらない原因になります。

トラブルメーカーを退去させることは至難の業です。賃料を長期滞納している賃借人を退去させるよりも難しいことが多いので敬遠するべきです。
粗暴な方やトラブルメーカーがいないかについては不動産会社にお尋ねください。良心的な不動産会社であれば回答してくれます。問題が無ければ「問題を起こす方はいません。」と即座に明確に回答してくれると思います。口ごもる、明確な回答をしない、回答を拒否する場合は怪しいと考えるべきだと思います。

「サクラ」を居住させている物件に注意

新築物件や全館フルリノベーションをした中古物件の場合には、注意しなければならないことがあります。それは、満室にしてから売り出すこと目的として、いわゆる「サクラ」を居住させていることがあります。

満室の物件と、空室がある物件とでは、どうしても満室の物件の方に人気が集まります。このため、売主の不動産会社がダミーの入居者(サクラ)を用意し、架空の賃貸借契約書を作成して入居中であると偽装し、「満室稼働中の物件」として販売することがあります。サクラの賃料は買主の預金口座に振り込まれますが、振り込まれるのは最初の1~3か月間だけです。その後はどんどん退去し、最終的に半分以上が空室になることがあります。特に地方や郊外の物件に多いです。

買主が「詐欺ではないか」と疑っても、それを証明することは困難です。賃貸借契約書が作成され、それに則った賃料が支払われているのであれば賃貸借契約は有効ですし、賃貸借契約書記載の内容に従った上で退去の通告をしているのであれば、外形的な違法性は見当たりません。

相場よりかなり高い賃料を設定している物件が満室である場合は「怪しいかもしれない」と考え、自分で年間想定賃料収入を算出する必要があります。くれぐれも慎重に対応するべきです。