賃貸物件で新型コロナ感染者が発生した場合におけるオーナー様の対応(新しい局面に対する対応)

 新型コロナウイルス感染症の流行が止まりません。特に東京、大阪、およびその近隣の県では新型コロナウイルス感染症の感染者が激増しており、感染して重篤化しても入院できず、療養用ホテルも満室という状況で、自宅でお亡くなりになられる方が増えています。

 報道によると、同居している夫婦とお子様1名が感染し、40歳台の母親が自宅で亡くなったとのことです。大変に痛ましいです。素人目には軽症であるように見えても突然重篤化し、直ちに生命が危険な状況に陥ることがあり、家族が同居している場合は同居している家族全員が感染することが避けられないようです。

 ワクチンについてはガンガン打ちまくる体制ができているものの、肝心のワクチンの入手が滞っているようであり、特に東京などの大都市における自治体の中にはいつになったら接種できるのかが全くわからないところがあります。

 以前、このブログでは入居者に感染者が発生した場合の対応について掲載しましたが、現在は新たな段階に突入したと言えます。重篤化しても入院できない方が増えていることから居室の消毒をいつまでたっても行えない、管理会社の管理員が引き揚げる、清掃業務が止まる、空室に対する内見が取りやめになる等が生じています。

 このため、本日は入居者に感染者が発生することを想定してオーナー様が執るべき対応、および感染者が発生しているのにいつまでも入院できず自宅療養となった場合の対応について書きます。

感染者が発生することを想定した上で、オーナー様があらかじめ行っておくべきこと
 入居者に対し、「万が一感染が確認された際にはオーナーまたは管理会社に直ちに連絡して欲しい」と伝えることが必要です。チラシを作成し、各部屋に配布することが有効です。

 このチラシには、「感染した旨の連絡があっても、感染した方の部屋番号や氏名を開示することはない」と記載しておきます。

 管理会社に対しては、「入居者から感染した旨の連絡があった際には直ちに自分に連絡して欲しい」と言い含めておきます。また、同じ建物における他の入居者より感染した方の部屋番号や氏名の照会があっても絶対に応じないように念押しをしておきます。

 管理会社より、感染者が発生した際には常駐している管理人の引き揚げ、巡回及び清掃業務の中止等があり得ると言われることがあります。この場合は、入居者に配布するチラシに管理人の引き揚げ、ゴミ収集の一時停止などが行われる可能性がある旨を記載しておきます。

 また、救急車が到着して部屋を訪問する際にオートロックを開けられない(入居者が室内で気絶している)等の事態に備え、「救急隊が到着してオートロックが開けられない場合は近隣の部屋の方にはオートロックを開けることについて、御協力をお願いします」と、チラシに書いておきます。

 万が一、管理人が引き揚げた場合、巡回・清掃業務が停止した場合における対応をあらかじめ考えておく必要があります。特に管理人が常駐しているマンションにおいて管理人が引き揚げると、様々な支障が生じます。設備の故障、何らかの突発事態が生じた際は管理人に届けることを前提としている物件では、管理人が不在の間における管理会社の窓口担当者を決めてもらう必要があります。

 管理人が引き揚げた場合でも、共有部分の消毒および清掃を止めることはお勧めしません。管理人が行っていた清掃業務をどうするかについて管理会社と打ち合わせ、必要に応じ外部の清掃業者に依頼することを検討します。臨時の清掃依頼になりますが、依頼先の業者をあらかじめ検討しておきます。

入居者に感染者が発生し、連絡があった場合
 感染者発生を入居者に伝えるかについては、賃貸物件の入居者の性質に従い判断します。賃借人同士の団結力が強い物件では、注意喚起を行う目的で感染者の発生を冷静に伝えるのが良いと思います。その際には、感染者の部屋番号、氏名などの個人情報の開示を一切行わず、照会があっても対応しないことが必要です。

 賃借人同士の人間関係が希薄であり攻撃的な性格の入居者が多い物件、またはパニックに陥る入居者の発生が想定される物件があります。このような物件において感染者発生の事実を伝えると入居者が「感染者を直ちに追い出して欲しい」とか「追い出せないなら自分が退去する」等と騒ぐ恐れがあります。

 感染者が発生してもその事実を伝えず、共有部の清掃をしっかり行うことで乗り切ることが良い物件があります。

 感染した入居者に対しては、オーナー(または管理会社)において可能な限り、(できれば毎日)病状を把握するように努めます。

入居者が感染した場合における共有部の清掃は、専門業者に依頼するべきか
 現在、新型コロナウイルス感染症の主流はデルタ株であると言われています。この変異株は感染力がとてつもなく高いとのことです。

 従って、手すり、エレベーターの内部、その他の感染者が触れている可能性がある部位の消毒は、相応の費用が発生しますが専門業者に依頼するのが得策です。