共有物分割請求訴訟の応用(競売物件を安く購入し、転売する)

 昨日の投稿では相続人が多数存在することから不動産を売却出来ない場合に、共有物分割請求訴訟および不動産競売で解決できることを書きました。

 今日は、共有物分割請求訴訟の応用ということで、不動産競売を利用して不動産を安く購入し、高値で売却する方法について書きます。

 最近、不動産競売を利用して不動産を購入しようと思っても、ほぼ市場流通価格に近い価格で入札しないと購入できないことが増えています。不動産競売が世の中に広く知られるようになり、多くの方が入札するようになったからです。

 しかし、安く購入できる競売物件があります。それは土地や住宅が二人以上の所有者による共有であり、共有者の一人における持分のみが不動産競売の対象になっている物件です。

 親が住んでいた戸建住宅を二人の息子(兄弟)が持分2分の1ずつの割合で相続し、兄がこの家に居住し、弟は住宅ローンを利用して別の住宅を購入し、居住していたという事例について考えます。

 弟が失業したことから住宅ローンの返済が行き詰まったとします。弟が購入した住宅を売却しただけでは住宅ローンによる貸付金を回収できない場合、住宅ローンを提供した金融機関またはサービサーは、弟が相続した戸建住宅の持分2分の1に対し、不動産競売の申し立てをすることがあります。

 しかし、このような戸建住宅を不動産競売で購入しても、購入者は居住者(兄)を直ちに退去させることは出来ません。兄の持分は依然として存続しているからです。

 さらに、この戸建住宅の持分を不動産競売で購入しても、用法としては居住者(兄)に対して家賃(持分に応じた価格。この例では相場の半額)を請求するか、不動産競売で購入した持分2分の1を購入することを求めるしかありません。

 都心の大きな戸建住宅の場合、相場の半額の家賃を貰ったとしても、利回りが低すぎてどうしようもないことが多いです。また、持分2分の1としても金額は数千万円に達することがあり、請求しても支払えないことがよくあります。

 このため、このような持分権のみを入札対象とした不動産競売では相場よりもかなり安い価格で落札できることがよくあります。不動産競売に先立ち、裁判所は不動産鑑定士に査定を依頼しますが、その価格は市場流通価格と比較して極めて低い金額になることが多いからです。

 このような場合、不動産競売のプロは持分を不動産競売で購入し、その後に共有物分割訴訟を提起します。そして共有物分割請求を認める判決を得た上で裁判所に不動産競売を申し立て、高値で売却します。

 共有物分割請求訴訟の確定判決により実行される不動産競売は、競売が成立して所有権が移転すれば全ての入居者に退去を求めることが可能です。したがって、市場流通価格に近い価格で売却出来ることが多いです。

 事例では、売却した価格の2分の1を入居している兄に渡すことになりますが、残額は共有物分割訴訟を提起した者(最初の競売で持分権を落札した者)が受け取れます。

 そして居住者(兄)に退去を求めることが可能であり、退去に応じない場合は強制執行を行うことになります。

 なお、持分権を不動産競売で購入し、共有物分割請求訴訟を提起して判決を確定させ、強制執行を行うまでには2年以上を要することがあります。

 短期間に稼ぎたい方には不向きですが、不動産競売で稼ぐプロの中には、この方法で大きく儲けている方がいます。