賃貸物件運営の初心者は、サブリース物件を購入するべきではありません

 昨日の投稿では、購入した時点で経営破綻することが確実な収益用不動産が存在することについて書きました。想定賃料が適正か、利回りは極端に低くないか、いわゆるサクラが入居している物件ではないかの確認が必要である旨を書きました。

 今日は、賃貸アパート、マンションの運営初心者は、いわゆるサブリース物件の購入を控えるべきであることについて書きます。

 賃貸アパート、マンションなどの収益用物件を購入する際に、新築物件であれば建築会社や売主、中古物件の場合は不動産会社から、サブリース物件であるとして紹介されることがあります。

 また、サブリース物件ではない収益用不動産を購入する際に、不動産会社などから「サブリース物件にした方が手がかかりません。」等と言われたことから、オーナー様が自らの意向によりサブリース物件にしてしまうことがあります。

 サブリースは、収益用物件を一括してサブリース事業者に貸し出すことにより行われます。この際にはオーナーとサブリース事業者との間に、第三者に対する転貸を認める内容を特約とする賃貸借契約(マスターリース契約)を締結します。

 サブリース事業者はオーナー様から借りた収益物件を自ら管理します。家賃の出納、空室発生時における入居者募集、その他の管理業務を行います。入居希望者はサブリース事業者との間に賃貸借契約を締結します。

 サブリース事業者はマスターリース契約に基づき、空室の有無にかかわらず一定の賃料をオーナー様に支払います。支払われる賃料は、サブリース契約を締結しない場合にオーナーが受け取れる賃料の75~80%程度です。

 収益物件をサブリース物件にすることにより、オーナー様は家賃の請求、督促、共用部の清掃などのいわゆる管理業務から開放されます。また、空室が発生した場合でも一定の金額の家賃がオーナーに支払われます。

 また、空室が発生してもサブリース事業者よりオーナー様に一定の賃料が支払われることから、事業用ローンを利用して収益用不動産を購入する際における金融機関の心証が良くなり、融資の審査を通過しやすくなります。

 これらの理由により、特に収益不動産の運営を副業として行うオーナー様の中には、収益不動産をサブリース物件にする方が多くいらっしゃいます。

 しかし、オーナー様が自ら所有する収益用不動産をサブリース物件にする際には、マスターリース契約の内容を良く確認し、十分に注意する必要があります。

サブリース契約の注意点
1.物件のオーナー様からマスターリース契約を解約することが困難
 通常、マスターリース契約は普通賃貸借契約として契約を締結します。このため、管理の質が良くなく、共用部分の清掃が行き届いていない、他の入居者との間でトラブルを頻繁に起こす入居者がいても注意しない、オーナー様とサブリース事業者との間で何らかのトラブルが発生した等の場合でも、収益用不動産のオーナー側からマスターリース契約を解約することは極めて困難です。

 解約するためには借地借家法が定める要件を満たす必要があります。つまり、「賃貸人および賃借人の間における相互の信頼関係を破壊した場合」でなければ解約は困難です。

 解約が認められるためには、サブリース事業者がオーナー様に支払う賃料を3か月以上滞納した場合、マスターリース契約に記載されている条項に反した場合などに限られます。

 どうしても解約したい場合は、オーナー様はサブリース事業者に多額の違約金を支払わなければならないことがほとんどです。

2.マスターリース契約またはそれに付随する契約に、オーナー様が不利になる特約が記載されていることがある
 よくあるのは外壁塗装、室内外のリフォーム、設備の更新をオーナー様の負担で必要以上に頻繁に行うことが定められており、しかもサブリース事業者が指定する工事業者以外に工事を発注することは出来ず、違反した場合には違約金を請求する旨の特約です。

 耐用年数を無視した短い頻度で工事を行うことが求められ、しかもサブリース事業者が指定する工事業者の工事料金は相場の2~4倍に設定されていることがよくあります。

 工事代金のうち、相場を超える部分がどこに流れるかは説明するまでもありません。

3.売却する際の査定が低くなる
 収益用不動産の価格は利回りで決まる部分が大きいです。このため、近隣における一般的な収益不動産と比較して、売却時の査定も7~8割になることが多いです。

空室の有無にかかわらず一定の賃料をオーナーに支払われることはオーナー様にとって利点と言えるかもしれませんが、オーナー様が得られる賃料は、サブリース契約を締結しない場合にオーナー様が受け取れる賃料の75~80%程度です。 

4.マスターリース契約の更新時に賃料の大幅値下げを要求されることがある
 家賃の値下げ要求は、借地借家法が認めている行為です。このため、契約更新時にマスターリース契約で設定する家賃を大幅値下げを要求されることがあります。値下げを拒否した場合、家賃を裁判所に供託する、顧問弁護士を利用して強引な値引き交渉を挑む、等を行うサブリース事業者があります。

 これが原因で収益用不動産の運営が破綻し、物件は不動産競売にかけられ、最終的には自己破産に追い込まれたオーナー様が数多くいらっしゃいます。

まとめ
 サブリース事業者を利用して賃貸不動産の運営を行う際には、マスターリース契約の内容を理解し、オーナー様において不利になる不合理な内容が盛り込まれていないかを精査する必要があります。

 賃貸不動産の運営経験がある方でないと、ザブリース事業者が悪徳業者であった際に騙され、不測の損害を被る恐れがあります。

 あくまでも個人的な見解になりますが、賃貸アパート、マンション等の収益不動産の運営を初めて行う方は、いわゆるサブリース物件の購入を控えることをお勧めします。

 また、サブリース物件ではない収益用不動産を購入する際に、不動産会社等からサブリース事業者を紹介されることがあります。しかし、最初のうちはサブリース事業者の利用を控え、不動産管理会社に入居者の募集、賃料の出納、見回り等の「一般的な管理のみ」を依頼することをお勧めします。