山全体、または山間部の土地を売りたいと言われても...

 「所有している山を、そちらの会社で買い取ってもらえませんか。」という問い合わせがたまにあります。「山を所有していた親が亡くなり、相続したが管理できないので売却したい。」とする内容が多いです。

 残念ですが、私の会社では「山」の買い取りは行いません。今日は、その理由について書きます。

山の利用法は限られ、一帯が開発禁止にされていることがある
 山は別荘地にするか、キャンプ場を設ける、林業を行う、農地にする以外の利用法がないのが通常です。別荘、キャンプ場または農地を設けるためには道路を造り、土地を平坦にし、電気および水道を開通させる必要があります。林業を行う際は、樹木が生長して出荷できる迄に気の長くなるほどの長い年数を要します。

 しかし、それ以前の問題があります。国土交通省、都道府県、地元の自治体が「開発禁止」にしていることがあります。

 特に注意が必要なのは自然公園法および景観法です。開発が禁止されているエリア内で道路を開通させる、建物の建築を行う等の開発行為を行った場合、山の所有者でも処罰されることがあります。

 また、土砂災害危険区域に指定されているエリアでは、原則として建物の建設が許可されません。

山を所有することは大きなリスク
 さらに大きな問題があります。崖が崩落したことから麓の住宅に被害が生じ、居住者が死傷した場合は山の所有者が損害賠償責任を負わなければならないことがあります。

 崩れそうな崖があり、崖下に住宅がある場合は崖の擁壁工事を行う必要があります。山の崖に擁壁を設けるのに必要な費用はとてつもなく莫大で、数億円~数十億円を超えることがあります。多くの場合に「山」の購入費用を大きく超えます。

 道路を開通させても、台風が通過した際に倒木が発生し、道路の通行が出来なくなることがあります。

 一部の不良産廃業者による不法投棄にも警戒が必要です。空き地に古タイヤ、冷蔵庫などの大型家電などを無断で廃棄する輩が多くいます。山の入り口に柵を設けて侵入できないようにする、頻度高く見回りを行う等の対策が必要です。

 野生動物にも注意が必要です。特に熊が出没する場合は、付近の住民やハイカーが山に立ち入らないように柵を設ける等の対応が必要です。

 山を所有することはリスクが大きいだけではなく、維持費が莫大で手に負えません。購入を希望される方はとても少ないのが現状です。このため、私の会社では「山」の買い取りは行っていませんし、今後も行う予定はありません。