中古戸建住宅を購入する際の重要事項説明における注意点

 中古戸建住宅は、多くの場合に土地と共に売買の対象になります。土地に関する注意点は昨日および一昨日の投稿を参照願います。

 本日は、中古戸建住宅の建物に注目し、重要事項説明の際に行われる説明に対する注意点、および説明がない場合に確認をお勧めする点について書きます。

1.いわゆる違法建築物ではないか
 外観上はそれ程傷みがあるように思えない、比較的新しい建物であっても遵法性に問題がある建物があります。多いのは、特定行政庁や地方自治体が定める建ぺい率および容積率を超過している建物です。

 よくあるのは増築を行ったことにより指定建ぺい率および容積率を超えた建物です。増築を行う際は、増築に関する建築確認申請および完成検査をしなければなりません。ところがこれを怠っている建物があります。このような建物の場合、遵法性に問題がありますので住宅ローンの利用が認められないことがあります。 

 これとは別に、建物の建築時には指定建ぺい率および容積率を超過していなかったとしても、現時点では超過している建物があります。このような建物を「既存不適格建築物」といいます。

 既存不適格建築物は、いわゆる違法建築物ではありません。しかし、建物を再建築する際はその時点において指定されている建ぺい率および容積率を遵守しなければなりません。従前と同じ大きさの建物を建てることは法的に許容されなくなります。

 東京都区内でも無届建築物が散見されます。建築確認申請を一切行わず、違法であることを承知の上で建物を建てる悪徳建築会社が存在します。いわゆるアウトローであり、建築基準法を無視した杜撰な工事を行い、暴利をむさぼっています。

 無届建築物は、特定行政庁または市区町村役場の判断で取り壊し命令が発令されることがありますので、絶対に購入するべきではありません。

 重要事項説明書に建築確認申請および検査を完了している旨の記載が無く、売主において建築確認申請および検査完了を証明する書類を保存していない場合があります。この場合は、売主に対し建築確認申請および検査を完了しているかについて尋ねることを強くお勧めします。

 なお、古い建物の場合は地方自治体により建築確認申請に関する書類を廃棄していることがあります。この場合は、厳密には売主において建築確認申請および検査完了を証明する書類を保存していなければ建築確認申請および検査完了を証明できません。

 しかし、地方自治体に確認すると「昭和○○年以前における建築確認申請関係書類は廃棄しています。」などと回答されることがあります。該当する年に建築された建物で、売主が建築確認申請および検査を完了している旨を主張し、違法に増築された部分が見られない場合は、一応は合法的に建築された建物であると見做すことになります。

2.過去の履歴
 確認が必要なのは、人の死に関する内容、いわゆる心理的瑕疵だけではありません。

 過去において、この建物の強度を弱める履歴の有無および内容の確認が必要です。具体的には火災に関する履歴、床上浸水や床下浸水等の浸水に関する履歴、過去の地震による修復箇所がある場合はその修復履歴、雨漏りを修理した場合の修理の履歴、シロアリが発生したことがある場合は駆除の履歴、自動車が建物に飛び込み建物の一部を損壊した履歴がある場合はその修復履歴、その他になります。

 火災の場合は、ボヤ程度であっても柱および梁を損傷していることが多いので告知が必要とされています。当然、重要事項説明書にも記載されていなければなりません。

 告知せず、重要事項説明書にも記載しなかった場合において、買主が後で火災の履歴を知った場合は、売主は買主から損害賠償を請求されることがあります。

3.利用できない設備
 中古住宅として購入した日から利用できると考える設備が故障などの理由により利用できず、修理未了の状態で引き渡す場合は、その旨を重要事項説明書に記載しなければなりません。

 具体的には湯沸かし器、エアコン、水道、トイレ、ガスコンロ(キッチンユニット)等です。修理せずに残置物として引き渡されるのであれば、重要事項説明書にその旨が記載されてしかるべきです。通常は、設備に関する内容を特約条項により定めます(東京都区内の場合)。