都心の不動産売物件が「非公開物件」である場合は要注意
最近、土地や戸建住宅の購入を検討されている方から「非公開物件限定で紹介してください」と依頼されることが増えています。アットホーム、SUUMO、HOMES等の不動産ポータルサイトに掲載されている物件は検討しないと言われるのです。
このように依頼されるお客様は「良い物件は非公開物件の中にしかない」と心の底から信じ切っています。「大手の不動産会社の営業担当者から『良い物件は非公開物件の中にしかありません』と言われたから非公開物件のに限定して探したい」とか、「不動産に関するブログに『非公開物件に限定して探すべき』と書いてあるからそのようにして欲しい」と言われることが多いです。
不動産の売物件を非公開にし、いわゆる「囲い込み」を行うことにより両手取引に持ちこみ、売主、買主の両方から仲介手数料を得る営業手法があります。この営業手法を行うために、質が良くない不動産営業担当は「囲い込み」を行うことを考えがちです。古典的ではありますが、現在でも質の良くない営業担当が行っています。
「囲い込み」を行われた場合、購入希望者がなかなか現れないことから売買契約の成立に日数を要します。それでも売主および買主の双方が満足し、しかも不具合がない不動産を無事に取引できたのであれば、職業倫理上の問題はありますが、大きなトラブルには発展しにくいです。
しかし、現在はコロナ禍です。買い替え需要が激減していることから旧耐震の区分マンションを除き、売物件の数が極端に減少しています。
新たに不動産の購入を希望されるお客様の数も、コロナ禍になる前と比較するととても少ない状況です。不動産会社への訪問時、および内見時に新型コロナウイルス感染症に感染することを恐れているためではないかと思われます。
現状では、非公開物件として売却するように依頼されたことによりレインズ掲載、ポータルサイトへの掲載のいずれも行わない場合は、都心の物件でも売却までに最低で数ヶ月、場合により1年以上を要します。このため、大半の不動産会社では売主様の承諾を得た上でレインズ掲載のみを行うか、懇意にしている不動産会社(数社程度)のみに情報を流しているようです。
ところが、とにかく売物件の数が極端に少ないことから、レインズに掲載した物件、または特別な繋がりで得られた秘密の情報を売主や元付業者の許可を得ることなく、そのままアットホーム、SUUMO等のポータルサイトに掲載する、質の良くない営業担当が増えています。非公開で売却しようと思っても、情報を入手した誰かが必ずと言って良いほどに情報をポータルサイトに掲載してしまう状況です。これでは「公開物件」と同じになってしまいます。このような状況なので、売主様から「非公開での売却」を依頼されても完全に非公開の状態で販売活動を行うことはとて困難です。
私の会社でも無許可掲載をされたことが何回もあります。無許可掲載をした不動産会社に対しては、その都度掲載を止めるようにお願いしているのですが、しばらくすると他の不動産会社が無断掲載をするという状況で、どうしようもありません。コロナ禍になる前には考えられなかった状況です。
「どうしても非公開物件のみを紹介して欲しい」と依頼した場合、どのような物件を紹介されるか
売主様の中には物件の欠点や問題点を隠して売却するように依頼する方がいらっしゃいます。例えば心理的瑕疵があるにもかかわらず、それを隠して売るように依頼する売主がいます。また、隣接住戸の住人が神経質なトラブルメーカーであり、物件を購入したら何らかのトラブルに巻き込まれることが避けられないのに、それを隠して売却するように依頼する売主がいます。
このような物件を売却する際は買主に対し瑕疵の内容を告知する必要があります。告知せずに売買仲介を行うことは宅地建物取引業法に違反する行為です。不動産会社としては積極的に仲介したくない物件であることから、このような物件は「非公開物件」として長期間とどめ置かれることになりがちです。
このような状況で、不動産を探している方が「どうしても非公開物件に限定して物件を探したい」と不動産会社の営業担当に申し出た場合、何らかの瑕疵がある物件を薦められることになりかねません。
売主から瑕疵の内容を告知しないように言われていることから、告知されずに高値で売却されることになります。瑕疵がある物件は安く取引されるのが通常ですが、瑕疵がない物件であるとして売却されることから買主は高値づかみをさせられることになります。
この場合、重要事項説明書および売買契約書は、瑕疵の内容を不動産会社が知らなかったことにして作成されることが多いです。または、瑕疵の内容については重要事項説明書に簡潔に記載し、その部分は口頭での説明から外すという行為が散見されます。いずれも質が良くない営業担当が行う常套手段です。
まとめ
現在はコロナ禍であり、売物件の数が異常に少ない状況です。この状況で購入希望者が「どうしても非公開物件に限定して物件を探したい」と不動産会社に伝えると、何らかの瑕疵がある物件を瑕疵がない物件であるとして薦められる恐れがあります。
繰り返しますが、現在の都心では非公開物件に限定して物件探しを行える状況ではありません。
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