収益用不動産(1棟ものの賃貸マンション)購入時の注意点(その1)

 収益用不動産の価格は自己居住用(実需用)の区分マンションや戸建住宅よりも遥かに高額です。

 しかし、物件価格と表面利回りのみに注目し、自ら調査をすることなく不動産会社に一任し、内見も行わずに購入される方がとても多いので驚いています。

 最近、「老後には2,000万円が必要」というフレーズが一人歩きしました。さらに新型コロナウイルス感染症がなかなか終息しなかったことから飲食店経営をしていた方が飲食店を閉店し、損切りをした上で賃貸住宅経営に事業を転換しました。このために収益用不動産、特に1棟ものの賃貸マンション(レジデンス)に対する需要が急増しました。

 この投稿を書いている2022年3月現在においても、収益用不動産に対する需要は増え続けています。しかし、需要が急増したことから売主が強気になり、売却時における相場価格が大幅に上がりました。

 このため、都心における1棟ものの賃貸マンションの表面利回りは4.5~5.5%前後迄に低下しました。数年前までは5.5~9%程度でした。大きく低下しているのが現状です。

 1棟ものの賃貸マンションなどを購入した後に後悔し、私に相談される方がいらっしゃいます。収益用不動産を購入する際は、利回りが良好であっても内見および詳細な物件調査が必要です。これらを怠ったために悲劇に遭遇した相談者が多いです。

賃貸中の物件は内見不可、しかし共有部の内見は可能

 現況が賃貸中であるお部屋を内見することは認められていません。第三者が室内に立ち入る場合は賃借人の許可が必要ですが、立ち入りを許可する賃借人はいないからです。防犯上の観点からも、入室は許されていません。後述しますが、現況空室の内見は可能です。

 共有部の内見は可能ですが、なぜか共有部の内見を断わられる物件があります。このような物件の多くは、大半は共有部を内見されたら購入を思いとどまらせる何らかの要素があります。

 共有部の内見を断られた場合は、その物件の購入を控えることが賢明です。さらにその物件を紹介した不動産会社も利用するべきではないでしょう。お客様に物件を紹介しておきながら当該物件の内見を断る行為は非礼ですし、物件の状態を意図的に隠して売ろうとしているとしか考えられないからです。

共有部のチェックポイント

 階段に物が置かれていると、火災などの際に避難する妨げになるので非常に危険です。私物や植木鉢などが置かれていることがよくあります。

 自転車置き場も要注意です。錆だらけで長期にわたり使用されていない自転車が何台も放置されていることがあります。このような物件は、賃借人に対するオーナー(または管理会社)の啓蒙が行われていない物件であるといえます。

 オートロックやエレベーターがある物件の場合には、正常に動作するかを確認する必要があります。誰もいないのにオートロックのドアが勝手に開閉する、エレベーターが激しく揺れる等の場合は要注意です。修繕および定期的な点検を怠っていることを示しており、購入後に多額の修理費を要することがあります。

 廊下の清掃レベルも確認事項です。あまりに汚い場合は、適切な管理が行われていないと判断できます。

 廊下にペットの糞が落ちている物件があります。この物件がペット飼育不可であれば、契約に反してペットを飼育している賃借人がいることになります。

 鉄製の階段が設けられている物件では、塗装の状況を確認します。錆が酷く、腐食していて危険な状態の物件が散見されます。定期的に塗装していれば腐食することはあまりありません。

空室の内見

 空室がある場合は、内部の内見をするべきです。壁に穴が空いている、室内設備の破損が放置されている、残置物が多く放置されている、エアコンが壊れていて動作しない、窓ガラスを施錠できない等の場合は、オーナーの管理が不適切な物件であると考えられます。

 本来であれば室外に設置するべき給湯器が居室内に設置されている物件に遭遇したことがあります。異常を是正せずに賃借人を居住させているオーナーの感性が疑われますが、このような物件では他にどのような異常が見つかってもおかしくありません。正常な状態に修復するには多額の費用を要することが多いので、そのような物件の購入は控えるべきです。

 雨漏りの有無を確認する必要があります。最上階に空室がある場合には、念のために天井を確認し、雨染みなどがないかを確認します。

※次回の投稿に続きます。