収益用不動産(1棟ものの賃貸マンション)購入時の注意点(その3)

※昨日回投稿した内容の続きです。

建築確認申請および完成検査を終えた建物であるかの確認

 物件の購入に際し、事業用ローンによる融資を受ける為には、原則として建築確認申請および完成検査の両方を終えた建物(建築確認申請済建物)である必要があります。

 建築確認申請を行っているものの完成検査を終えていない建物がとても多いのですが、これを行っていないと建物の購入に際し、事業用ローンによる融資を受けられないことがあります。

 建築確認申請に関する書類は売主が保管しているはずです。役所でも保管していますが、保存期間は地方自治体の判断に任されており、短いところでは10年程度のところがあります。

 売主が建築確認申請書類を保管していない場合でも、建築確認申請および完成検査が正規の手続きで行われていれば、役所に「記載事項証明書」の発行を請求できます。この書類は建築確認申請および完成検査が行われたことを証明する書類であり、この証明書があれば、金融機関から融資を受ける際に建築確認が行われているものとして扱われます。

 なお、古い建物の場合は地方自治体により「記載事項証明書」を発行してもらえないことがあります。

無届建築物に注意

 東京都区内の収益用不動産の中にもいわゆる「無届建築物」が存在します。私が直接確認した物件がありますし、無届で建築物を建てる違法業者が存在します。 

 いわゆる「無届建築物」の場合、売主が建築確認申請書類を保管していることはありません。もちろん、役所から記載事項証明書を発行してもらえることもありません。

 「無届建築物」は、かなりの安値で販売されていることがあります。しかし、地方自治体による取り壊し命令がいつ発令されてもおかしくありません。

 発令された場合における入居者の立ち退きに要する費用、および建物の取り壊し費用は所有者が負担しなければならず、物件の価値は無価値になります。売主に補償を求めることはできませんので、かなり安くても購入しないことを強くお勧めします。

 「今まで何十年も取り壊し命令が発令されたことはありません。」とか「このエリアは無届建築物ばかりなので、取り壊し命令を発令したら役所も対応出来ません。このため、今後も取り壊し命令が発令されることはありません。」等のセールストークを用い、無届建築物の購入を勧める悪質な不動産業者があります。

 ほとんど報道されないのですが、私の会社がある東京都目黒区では発覚次第、容赦なく取り壊し命令が発令されています。中には竣工後1か月も経過していないのに取り壊し命令が発令された事案があります。

 また、「違法建築撲滅キャンペーン」等が予告なく始まることがあります。飲酒運転およびあおり運転が厳しい取り締まりの対象になったように、何らかのきっかけで行政は手のひらを返したように態度を変えてきます。  「無届建築物」は絶対に購入するべきではありません。

いわゆる”魔”改造をしていないかの確認

 無届けで建物を改築、改修した物件ではないかを確認します。違法性が高い物件には金融機関が融資しません。

 具体例としては1階の部屋を全て壊して駐車場にしたとか、屋上に小さな居室を無届けで設けて貸し出している場合が該当します。このような物件の購入には融資しない金融機関が多いです。

 おかしな不動産を特集したテレビ番組等で、オーナー様が自ら大工工事を行い、賃貸マンションの屋上に小さな居室を設けて貸している物件が紹介されることがあります。賃料収入を少しでも増やしたいとの思いから、オーナー様が自らこのような居室を増築することがありますが、この行為は違法建築行為に該当します。この増築部分を撤去しなければ、買主に融資しない金融機関が多いです。

 また、素人判断でオーナー様が自ら違法な改造を施すと、建物の強度を大きく損なうことがあります。この点からもオーナー様が自ら大工工事を行うことにより増築することは避けるべきです。

増改築および大規模修繕の履歴確認
 増築した物件でも建築確認申請および完成検査が適法に行われていれば問題ありません。問題は、増築に際して建築確認申請が行われていない物件です。この点を売主に確認する必要があります。

 また、大規模修繕の履歴についても確認が必要です。古い建物であるのに大規模修繕を一度も実施していない、またはその履歴に関する書類の提出を拒む物件は、購入するべきではありません。