賃貸マンションの1階を店舗に改装する際は排気ダクトに注意

 賃貸マンションの1階にある部屋は、あまり人気がありません。空になると次の入居者がなかなか決まらない物件が多いです。1階の部屋は眺望が良くありませんし、防犯上の問題を懸念する方が多いことがその理由です。

 このため、オーナー様の中には1階部分を店舗や事務所に改装して貸すことを考える方がいらっしゃいます。確かに人通りが多い道路に面しているマンションであれば、店舗または事務所にすることにより入居者が直ちに決まる可能性があります。特に店舗の場合、立地が駅近であれば住居として貸す場合よりも高額な賃料を得られることが多いです。

 しかし、1棟を丸ごと賃貸マンションとしていた建物の1階部分を飲食店店舗やセントラルキッチンに改装する際には注意しなければいけない点があります。それは排気ダクトを設置できるかという点です。

 排気ダクトを設置する際には建築基準法、消防法、ガス事業法、都道府県が定める火災防止条例等が定める設置基準を守らなければなりません。

 東京都における火災予防条例はこちらを参照願います。また、富士工業様のWEBサイトがとてもよくまとめられており、参考になります。

 レンジフードの大きさは厨房に設置されているコンロより大きくしなければならないとか、排気ダクトへの火炎伝送を防ぐための装置(火炎伝送防止装置)や自動消火装置を付けなければならない、ダクトの材質は不燃材としてグリス除去装置を付けなければならない、排気量に関する制限、必要換気量等が定められています。

 規制および制限の内容は地域により異なりますので、改装をお考えの場合は、物件が立地する都道府県における条例の確認をお勧めします。

排気ダクトを設置できない場合、テナントに貸し出すとオーナー様が訴えられる

 規制、制限を順守するためには大型の排気ダクトおよび各種装置を設置しなければならないものの、そのスペースがない場合があります。また、排気ダクトを設置する際には建物の壁に大きな穴をあけなければならないので建物の強度が劣化することがあります。その他にも建物の構造に関する理由から必要換気量を確保できない場合があります。

 このような場合、1階部分を店舗に改装することは認められません。しかし、入居するテナントが決まり、賃貸借契約を締結して厨房設備の設置工事を行なおうとしたところで設置できないことが判明し、大きなトラブルに発展した事案が多数あります。

 特にスケルトン状態で貸し出され、テナントが内装工事を行った物件では多額の内装工事費用が発生していることから賃貸借契約の解除と既に支払った金銭の賠償を求める裁判が提起されることがよくあります。オーナー様が敗訴した場合は多額の損害を被ります。

 不動産会社に仲介を依頼している場合でも、不動産会社の担当者に排気ダクトに関する知識がないと入居を認めてしまい、後で大きなトラブルに巻き込まれることがあります。しかし、排気ダクトに関する法令および条例を熟知している不動産会社の担当者は極めて少ないのが現状です。

 賃貸マンションの1階を店舗に改装して貸しすことをお考えのオーナー様は改装後に排気ダクトが設置できるか、設置できる場合にはどのくらいの大きさの厨房設備が許容されるか、換気量を確保できるか等について、建築士などに相談する事をお勧めします。