改正宅地建物取引業法が施行されました
改正宅地建物取引業法が令和4年5月18日に施行されました。これにより、不動産の売買および賃貸における取引の全てを非対面で行えるようになりました。また、契約書を書面ではなく電子データとして保管することを選択した場合には契約書への印紙貼付義務が免除されます。
非対面で行えるといっても、重要事項説明をZoom等のオンラインで行う必要があり、データ送付のみを行い説明を省略することは認められていません。
また、不動産売買契約では、売主おとび買主の双方および仲介会社においてオンライン面談(画像および音声の両方が必要)を行えるPC環境を備えている必要があります。万が一PC環境に不具合があり、通信が乱れるなどが起き、直ちに対応出来ない場合は対面形式による契約に切り替える必要があります。
契約書を書面にせず、電子データとして作成する場合は電子印鑑を利用します。電子印鑑は売主および買主の双方、重要事項説明を行う宅地建物取引士が作成しておく必要があります。また、作成には相応の費用が発生します。
紙の契約書を作成しなければ印紙税の納付義務がなくなりますが...
契約をオンラインで行う際に享受できる最大のメリットは印紙税の納付義務がなくなることです。印紙税は書類が作成された場合に限り納付するものとされていることから、契約書を電子データで作成し、「紙の書類」として作成しないのであれば印紙を貼付する義務がなくなります。
印紙税は長年減免措置が執られていましたが、令和4年3月31日をもって減免措置が廃止され、本来の税額に戻りました。減免措置が行われていた時期と比較すると、税額は約2倍(不動産売買契約書の場合)になっています。
その他のメリットとしては、 契約の当事者が一同に集まる必要が無くなることから時間及び交通費を節約できることが挙げられます。特に当事者が遠方にいる場合には大きく役立ちます。
良いことばかりではない
紙の契約書を作成せずに電子データで保存すれば、省スペースに貢献します。しかし、データを保管するPCの故障等に備え、バックアップを必ず行う必要があります。また、電子データの場合は情報が外部に漏洩しないようにセキュリティーに配慮する必要があります。
不動産会社としてはデータ管理を行うPCに対するアクセス権限を設ける必要があります。全ての社員がデータにアクセスできる環境にしておくことは許されなくなります。万が一、契約書のデータがオンライン経由で社外に漏洩する事件が発生したら、多額の損害賠償を請求されることになります。
内見は、従来通り現地を訪問するに限る
不動産会社が用意する動画の閲覧や現地訪問の生中継を見るだけで物件購入の可否を判断することはお勧めできません。内見後のプロセスについてのみオンラインで行うことを強くお勧めします。
内見をオンラインで行ったことから物件の問題点を見抜けず、「こんなはずではなかった」と後悔する事態は避けるべきです。契約不適合責任を追及できる場合がありますが、仮に裁判で訴訟を提起する場合は裁判費用が発生し、時間も無駄になります。
先日の投稿に書きましたが、内見をオンラインのみで済ませたことによるトラブルがあちこちで発生しています。この投稿に記載したのは賃貸物件ですが、売買物件の場合にも該当します。内見は、従来通り現地を訪問しておこなうことをお勧めします。
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