土地権利が借地権の収益用不動産を購入する際の注意点

 駅近であり、表面利回りが良好かつ現況満室である1棟もののアパートまたはマンションが安く売られていることがありますが、土地権利が借地権であることがよくあります。特に駅近で利便性が良好な場所は、土地権利が「借地権」であることがよくあります。

 土地権利が借地権である収益用不動産を購入する際には注意点が数多くあるので、本日はこれらについて書きます。

表面利回りが高く、固定資産税および都市計画税を支払う必要はないが...

 借地権の場合、固定資産税および都市計画税は地主が負担します。この点はメリットと言えそうですが、地代を毎月支払う必要があります。

 都内の駅近、または主要国道沿い等の利便性が良好な土地は、土地の所有者が売却したがりません。土地所有者は土地を貸して建物を建ててもらい、地代を得ることを考えます。土地を貸す際には土地に関する賃貸借契約を締結し、地代を毎月徴収します。

 収益用不動産の販売図面を参照すると、地代が記載されています。家賃の総額から地代を差し引いたとしても利回りが良好なので購入を安易に決め、後悔される方がいらっしゃいます。

 後述しますが旧法借地権の場合は一定期間毎に契約を更新する必要があり、更新時に更新料を地主に一括で支払う必要があります。また、建物の建て替え、修繕、改築の際には地主に承諾料を支払う必要があります。これらは意外に高額です。土地権利が借地権の物件を購入する際には注意が必要です。

 また、土地を担保にすることが困難(大半の地主は承諾しない)ので、収益用不動産を購入する際に金融機関から十分な融資を受けることは期待できません。

更新料

 事業用建物の借地権は、2008年以降に新たに借地権が設定された場合は「事業用定期借地権」として契約期間を10年以上50年未満にする必要があります。借地権の更新は出来ず、再契約は出来ません。契約期間が満了した際には建物を必ず壊す必要があります。

 2007年以前に設定された借地権は借地借家法の旧法が適用された借地(旧法借地といいます)であり、「普通借地権」として扱われます。契約期間は建物の構造により異なり、鉄筋コンクリート造などの堅固建物の場合は30年、木造または鉄骨造の非堅固建物の場合は20年とされています。これより短期の契約にすることは認められていません。

 更新料の金額は旧法借地の場合に問題になります。東京都区内の場合、国税庁が定める相続税路線価の5~9%、または更地価格の5%前後に定められることが多いです。金額は地域の慣習により定められ、物件所在エリアによりかなり異なります。

 更新料の支払時期は20年、または30年毎ですが、契約更新時に一括して支払う必要があることから物件の長期保有を検討する場合は一定額を毎年積み立てておく必要があります。

更新時期が近くなると売却しにくい

 借地権の更新時期が近くなると、不動産を売却してキャピタルゲインを得たい場合に問題になります。特に更新時期が5年未満に到来する物件では、購入して間もないのに高額な更新料を支払う必要があることから買い手がなかなか見つからない傾向があります。

承諾料

 借地権者は建物の建て替え、または増改築を行う際に「承諾料」を地主に支払う必要があります。承諾料の相場は更地価格の3%を目安とすることが多いですが、建て替えの原因や増改築の内容を勘案して地主と交渉し、決定するのが通常です。

 建物を売却する際は、借地権と共に売却することになります。売却すると借地権者の名義が変わるので、名義を変更するための承諾料が必要になります。

まとめ

 土地権利が借地権(旧法借地)である場合は契約更新の際に更新料が必要です。建物の建て替えまたは増改築を行う場合には承諾料が必要になります。いずれもかなり高額なので要注意です。

 また、物件の取得に際しては金融機関が融資をしてくれないか、かなり減額されることが多いです。このため、小規模のアパートやマンションを購入するのでなければ、土地権利が借地権の収益用不動産をあえて購入するメリットは少ないです。