不動産の売買契約および決済を「大安」のみ限定することについて
先勝、仏滅、大安等の「六曜」にこだわる方がたまにいらっしゃいます。以前に私の会社が売主として売却したマンションのお客様の中に、六曜にとてもこだわる方がいらっしゃいました。
この方は、内見・契約・決済(残代金の支払)および引渡しの全てを「大安」に行うことを要望されました。内見および契約を滞りなく行った時点では、買主様が「大安」にとてもこだわる方であることを知りませんでした。内見および契約は買主様の希望日に合わせて実施しただけであり、両日共に「大安」であることは知りませんでした。
しかし、契約後に買主様が「内見および契約のいずれも大安に行ったことから、決済および引渡しも大安にしてもらいたい。」と申し出ました。
決済は法務局が開局している平日にしか行えません。これが大きな問題になりました。次の大安は土曜日、その次の大安は祝日、さらにその次の大安は買主様に所用があるとのことで、平日で大安になる日は契約日の1か月以上先という状況でした。
このため、買主様に大安以外の日に決済できないかを打診しましたが、何としても首を縦に振りません。「どうしても大安でなければいけない。」の一点張りであり、仲介をした不動産会社も困り果てていました。
決済日を契約日の1か月以上に設定すると、その間に「気が変わった」として契約の取消しを求めるお客様が稀にいらっしゃいます。この場合、契約の取消には手付金の放棄が必要であることを説明しますが、「納得できない」と主張されることが多く、トラブルになることがあります。また、長期間待たされた挙げ句に契約を一方的に取り消された場合には、他のお客様に対する販売機会の損失が売主において発生します。
買主様に決済の前倒しを繰り返しお願いしても「どうしても大安でなければいけない。」と言われるので、契約日の1か月以上後に到来した「大安」に決済および引渡しを無事に済ませました。
金融機関から融資を受けて購入する場合は、全てを大安に設定出来ないことがある
前述したお客様は不動産の購入費用の全額を一括で支払われたことから内見から決済までの全てを大安に設定出来たのですが、金融機関との間に金銭消費貸借契約(ローン契約)を締結する際には決済・引渡しまでの全てを「大安」にすることが認められないことがあります。
金融機関から融資を受ける期日(金銭消費貸借契約の発効日)は、金融機関においてもある程度は相談に応じてくれることが多いです。
しかし、大安が1か月以上も先になる状況において「大安でなければ決済しない」と主張される場合は、金融機関が融資を断ることがあります。「大安」にこだわるあまり金銭消費貸借契約の開始日を先送りにして月をまたぐと金利が変わり、多くの場合にローン審査のやり直しが必要になるからです。
六曜は日本人には深く浸透しており、「友引」には葬儀を行わず、「仏滅」には結婚式を行わないという方が大半です。しかし、そもそも六曜は仏教とは無関係(関係があると思われている方が多いです)であり、科学的根拠もありません。
さらに2033年には六曜を設定出来ないという問題があります。「六曜、2033年」で検索すると関連記事が多数ヒットします。いつが大安になり、仏滅になるのかが全くわからない状態になるようです。
六曜をどこまで信じるかは個人それぞれで異なりますが、不動産の購入に際して内見から引渡しの全てを「大安」のみに設定することは難しい場合が多いです。
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