不動産のAI査定が流行し始めていますが...

 「不動産 AI査定」のキーワードで検索すると、かなり多くのサイトがヒットします。査定結果が即時に示されますし、不動産会社ではないシステム開発会社が運営しているシステムもあります。

 とても便利なシステムのように思えますが、注意が必要な点が多いので、今日はこれらについて書きます。

AI査定はまだ開発途上であり、AI査定の結果を全面的に信用するのは危険

 現時点におけるAI査定は、過去の売買取引データを参照して査定の根拠の一つにしています。しかし、土地や戸建住宅の場合は前面道路の接道状況が1件毎に異なり、土地の状態も異なります。同一の町内にある物件でも前面道路が国道、公道、私道の区別はもちろん、傾斜地か平坦か、整形地か不整形地であるかにより査定価格は大きく異なります。過去の取引データを参照するだけで査定できる場所は極めて限られます。

 木造戸建住宅の場合、築20年を経過している物件は全てゼロ査定とするシステムが多いです。しかし、上質の材料を使用し、耐震工事およびリフォームをしっかり行っている物件ではゼロ査定にはしないことが妥当な場合があります。

 さらに、過去の取引データには何らかの理由により売り急いだ物件の売却価格も含まれ、個々の物件がどのような理由で売却されたかについては考慮されていません。不動産競売に先立ち行われ、通常の取引よりも物件が安く売られた任意売却物件のデータも加味されています。

 それに不動産の価格は景気動向に左右されています。特に東京都23区内ではここ2年間に地価が高騰しています。3年前や5年前の売却データは参考になりません。

 このため、土地や戸建住宅におけるAI査定の結果は目安程度に考えるべきです。少しでも例外的な要素が加わると、不動産会社や不動産鑑定士が行う査定結果と大きく異なることがよくあり、 AI査定の結果を全面的に信用するのは危険です。

AI査定の精度が上がり、信頼性を得る迄にはまだ相当の年月が必要

 AI査定の信頼性が向上するためには、多くのデータの集積が必要です。特に郊外や地方の場合には実際の取引事例が少ないことから、AI査定の結果が信頼できるレベルに達するまでにはまだ相当の年月、おそらくは10年以上を要すると思われます。

 当分の間、不動産会社や不動産鑑定士が行う査定結果の方が信用できると思われます。AI査定の結果を鵜呑みにして一喜一憂するのでは精神的ストレスが溜まりますし、信頼性も低いです。現時点では、あまりお勧めできる状況ではないと言えます。