住宅ローン詐欺事件が発生

 埼玉新聞のWEBサイトから引用します。

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ドッグ・ブリーダーの女逮捕、4820万円だまし取る 住民票など偽造、金融機関や不動産業者を信じさせる

 偽造した住民票などを使い住宅ローンをだまし取ったとして、飯能署は14日、飯能市美杉台7丁目、ドッグ・ブリーダーの女(44)を偽造有印公文書行使、詐欺などの疑いで再逮捕した。

 再逮捕容疑は2020年6月26日から同年9月4日までの間、7回にわたって偽造した住民票などを使い、住宅ローン融資金として、飯能市内の金融機関から計4820万円をだまし取った疑い。女は不動産を購入した入間市の不動産業者でも、偽の住民票などを使用していた。

 同署によると、女は不動産登記申請の際、法務局に偽造した公文書を提出した疑いで、今年5月25日に逮捕されていた。捜査の過程で住宅ローン詐取が発覚した。

 女は「やったことは間違いない」と容疑を認めているといい、同署は余罪などについて詳しく調べている。

埼玉新聞

 今度は地面師ではなく、住宅ローン詐欺です。今回の事件の発生原因は、 金銭消費貸借契約を締結した後に購入代金を買主の預金口座に一括して振り込み、その後に買主から売主に資金移動(振込)を行うことを予定していたためではないかと思われます。

 この事件の犯人は、融資金が振り込まれた直後に引き出し、行方をくらます行為を繰り返したのではないかと考えられます。このようにすれば、融資金の持ち逃げは可能でしょう。犯人は自分の素性をわからなくするために偽造した住民票を利用したのでしょう。

 通常、住宅ローン融資を利用した不動産売買を行う際は金融機関の応接室を借り、最初に金融機関と買主との間で金銭消費貸借契約を締結します。その後に売主、買主、司法書士、金融機関の融資担当者、不動産業者が集まり、金銭の受け渡し(通常は買主が振込依頼書を作成)を行います。

 司法書士は買主から委任状(実印押印)および印鑑証明書を受領し、身分証明書(運転免許証、住民票など)を確認します。さらに売主から登記識別情報通知(または登記済証)、固定資産評価証明書、委任状(実印押印)、印鑑証明書を受領し、売主の身分証明書を確認します。金融機関から抵当権または根抵当権の設定に必要な書類(委任状、印鑑証明、抵当権設定契約書または登記原因証明情報)を受け取り、金融機関の担当者の身分証明書を確認します。

 その後、司法書士は不動産が売買契約により引き渡されて所有権が移転したことを証明する書類(登記原因証明情報、司法書士が作成)、売主および買主から受領した書類一式を法務局に持参(またはオンライン送信)し、原則として決済日当日に登記申請を行います。

 決済を対面取引にし、上記の手順を踏んでいれば住宅ローン詐欺は発生しなかった可能性が高いです。しかし、現在はコロナ禍が続いているため、対面取引を避けたいという理由により金融機関の応接室を借りずに決済した可能性があります。

 実務では他の理由で金融機関の応接室を借りずに決済する場合があるので、コロナ禍であること以外の理由により対面取引にしなかったのかもしれません。このあたりは明らかにされていないのでわかりません。

 対面取引にしない場合、金銭消費貸借契約の締結後に住宅の購入金額を買主の預金口座に一括して振り込むことが多いので、どうしてもこのような事件が発生する懸念があります。

発覚した場合は重罪で処断される

 一連の行為は有印公文書偽造(刑法第155条第1項)、同行使罪(刑法第158条第1項)、および詐欺罪(刑法第246条)により処断されます。

 有印公文書偽造、同行使罪は1年以上10年以下の懲役が規定されており、詐欺罪は10年以下の懲役が規定されています。犯罪行為を複数回行い、被害額を賠償する能力がないのであれば最大で懲役15年の実刑が言い渡される可能性があります。

 地面師の場合は刹那的な快楽を求めて行う輩が多いようです。住宅ローン詐欺も同じかもしれません。刹那的な快楽を求めるとしても全く割に合わない行為なので、絶対に止めるべきです。