困った相談(その30、土地の境界線上に越境している建物)

 自身が居住するための土地を探している方からの相談(セカンドオピニオン)です。

相談内容(概要)

1.購入の候補となる土地(現況更地)をネット上で見つけたので売主側の不動産会社に連絡した。 
2.現場を訪問したところ、隣の建物のコンクリート基礎部分(鉄筋コンクリート)が越境していた。 
3.越境は幅約80cm、奥行き約7~8mであり、全て鉄筋コンクリートの塊。
4.売主側の不動産会社に越境している建物基礎について尋ねたところ「壊すと隣の建物が崩壊するので越境は甘受して欲しい」と言われた。
5.売主は、隣地所有者に「越境部分の土地を買い取って欲しい」と要望したが、断られている。
6.売主は、「越境部分をどうするかは購入後に買主が隣地所有者と話し合って欲しい」と言う。
7.この土地の立地がとても気に入っているので購入を前向きに検討したいが、購入後に他の問題点が発生することはないか。

 隣地所有者が建物の建築を依頼した際に、建設業者が境界の位置を誤認して建物を建てた可能性があります。しかし、越境している建物の基礎部分を撤去すると隣地の建物が崩壊するので、これの撤去を求めることは困難と思われます。

 「購入希望者が私である場合」という視点でしかアドバイスできませんでしたが、私の判断は「購入するべきではない」というものであり、そのようにアドバイスさせていただきました。売主から大幅な値引きを提案されたとしても購入はお勧めできません。

将来、隣地の建物が取り壊される際に問題が発生する

 問題は、将来において隣地の建物を取り壊す際に起きる恐れがあります。更地にするためには鉄筋コンクリートの塊である基礎部分を取り除くことになりますが、この基礎部分がかなり大きいことから撤去前にある程度壊しておく必要があります。

 壊す際にはかなり大きな振動および騒音が発生します。さらに壊れた基礎部分を完全に撤去する際に土が大量に崩落する恐れがあります。基礎部分が大きいので、崩落する土の量はかなり多くなると思われます。

振動および土の大量崩落による建物の傾き、外壁のひび割れが懸念される
  
 振動および土の崩落により建物が傾く恐れがかなりあります。外壁のひび割れも避けられないでしょう。

 建物の傾きを直すことは容易ではなく、難工事になります。傾きを直すためには技量の高い建築士に工事を依頼するしかありませんが、このような難工事を行える建築士はとても少ないのが現状です。工事が始まるまでに半年以上も待たされることが多く、工事費は高額です。

 このような場合、隣地所有者に損害賠償を求めることになりますが、資力がない場合は賠償に応じてもらえません。資力がある場合でも賠償の金額に関する争いが生じ、裁判を提起しなければならなくなる恐れがあります。

 不動産(土地、戸建住宅)を購入する際は、将来において隣地上の建物が取り壊される際の影響についても注意する必要があります。