収益用物件を購入し、大赤字に悩む方が増えていますが...
※「困った相談」の連載は、一旦終了します。
「老後は2,000万円が必要」とか「相続対策になる」との風聞に押されたことから収益用不動産(1棟ものの賃貸マンション、賃貸アパート、賃貸用区分マンション)を購入したものの、大赤字に陥り困っているという話をよく聞きます。
多くの場合、本来の価値よりも高い価格で、いわゆる「高値づかみ」をしたことが原因です。手持ちの現金一括で購入した場合はともかく、事業用ローンを利用して購入した方はローンの返済ができず、やがて差押えをされ、任意売却または不動産競売を通じ強制的に安値で売られることになります。多くの場合に借金が残りますが、これについては長期間をかけて返済し続けることになります。
原因の多くは、物件に関する調査不足によるものです。歩合制の営業担当者を雇用している不動産会社に物件の探索を依頼すると、担当者は早く自分の成績にしたいことから物件の詳細をほとんど伝えず、購入希望者に調査する時間を与えることもなく内見を行った当日、それも夜遅くに訪問して「今日、この場で契約しましょう」等と言ってくることがあります。「今日、この場で契約しましょう」という誘いに乗るのは禁物です。
想定家賃収入は要注意
確かに売買契約は「早い者勝ち」ではあるのですが、想定される家賃収入と支出金額(税金、管理費等)とのバランスを検討することは必須です。特に想定される家賃収入を物件所在地における平均的な家賃相場から推算される金額と対比することが必要です。
この推算は、購入希望者が自ら行う必要があります。ネット検索すれば、エリア毎の家賃相場が多数ヒットします。
私の会社がある東京都目黒区内の新築物件を調べたら、想定賃料が相場の1.6倍に達するものがありました。この想定家賃を基準にして表面利回り5%として売り出しているので悪質です。実際の表面利回りは3.12%(5÷1.6=3.125)しかありません。この物件を購入すると、事業用ローンの利率が2~3%程度であることから利回りは0.1~1.1%しかありません。これでは物件の維持費を支出するどころか固定資産税および都市計画税を支払うこともできません。
想定される家賃収入が、物件所在地における平均的な家賃相場から推算される金額と比較してあまりにも高額な場合は、その物件の購入は見送るべきです。 「今日、この場で契約しましょう。」 と言われてもキッパリお断りするべきです。
「現況満室」でもサクラに要注意
このような物件でも「現況は満室なので心配ありません。すぐに契約しましょう。」と言われることがあります。しかし、「満室」でも全ての入居者がいわゆる「サクラ」のことがあります。物件を購入したら「サクラ」は1~2か月の間にドンドン退去します。空室が発生したということで入居者を募集しても付近の家賃相場にまで家賃を下げないと入居者は決まりません。
「騙された」と気付いても後の祭りです。賃貸住宅の運営者は「事業者」であることから「消費者」としての保護を受けることは出来ず、損害賠償を求める場合は裁判を提起するしかありません。しかし、裁判を提起しても物件調査をあまり行うことなく売買契約書に署名捺印をした責任は大きく、売買契約の無効や取消を求めることは極めて困難です。
築古物件の場合、エレベーターおよびオートロックに注意
全面更新の時期が近づいていることから売り出されている物件があります。購入後、1~2年しか経過していないのにエレベーターの更新費用に1,500万円を要したという話を聞いたことがあります。オートロックも同様であり、更新には多額の費用が発生します。
室内設備の更新状況も注意するべき点です。給湯器、エアコン、温水暖房便座は消耗品に近いものと考えておく必要があります。部屋数が多い物件の場合、一時期に集中して故障が頻発し、新品に交換する必要が生じがちです。このあたりの見通しについても事前に確認しておく必要があります。
最寄り駅から物件までの道路の状況、嫌悪施設の存在、眺望、騒音に注意
最寄り駅から物件までの道路の状況、および付近の嫌悪施設については、意外に調査を怠りやすい傾向があります。最寄り駅から物件までの道路の道幅が狭いのにダンプカーなどの大型車が数多く通行する、急坂がある等の物件は、入居希望者から敬遠されます。
嫌悪施設については仲介を行う不動産会社が把握していると思います。反社会的勢力の事務所、葬祭場、排気ガスを大量に発生させる工場、粉塵工場などがあげられます。
眺望のほぼ全てが墓地である物件に遭遇したことがあります。心理的瑕疵があるとは言えず、告知事項もない物件ではありますが、空室が発生すると次の入居者がなかなか決まりません。
騒音については、平日の日中に現地に赴いて確認することをお勧めします。土曜日および日曜日は静かですが、平日の日中は近くの工場から発生する騒音が酷い物件に遭遇したことがあります。
問題点が多い物件は、購入を見送るべきであると言えます。
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