家賃滞納者、行方不明者がいる収益用不動産の購入は推奨しません

 立地が良い1棟マンションや1棟アパートを見つけた場合、登記簿上の記載に問題がなく、レントロールに記載されている家賃の総収入から算出される利回りが良好であると、それだけで直ちに売買契約の締結を即断される方がいらっしゃいます。

 レントロールとは、各部屋における賃料、借主(法人、個人の別)、入居開始日、次回の更新日を一覧表にまとめたものです。これを見れば利回りを直ちに算出できるとお考えの方が多いのですが、レントロールには家賃を滞納している、または行方がわからない方に関する情報が記載されていないことが多いので要注意です。

 特に部屋数が多い物件では「家賃を滞納している部屋が1部屋ぐらいあっても構わないだろう」と考える方がいらっしゃいますが、その1部屋の存在が賃貸住宅の運営を危うくすることがあります。

 家賃の滞納があっても、最低でも3か月継続していないとオーナー側から賃貸借契約を解約することはできません。家賃滞納が3か月以上継続し、それでも居座る場合は明け渡し請求を求める裁判を提起して明け渡し請求を認める判決を取得することになります。その後の交渉を続けても退去しない場合は強制執行を行ってもらうことになります。

 家賃保証会社と賃借人との間に保証契約が締結されている場合は家賃保証会社に対応を任せることにより退去に向けた交渉と代位弁済を行ってもらえますが、一切の話し合いに応じない強者の賃借人がたまに存在します。家賃保証会社によっては一定の期間(通常は3~6か月)が経過することにより代位弁済を打ち切ることがあります。この場合は、物件のオーナーが裁判を提起することになります。場合により強制執行まで依頼しなければなりません。

 強制執行まで行った場合の支出(裁判および強制執行費用)は数十万円~100万円超になります。さらに滞納が始まってから強制執行による退去までには半年~1年程度を要し、その間の賃料収入は得られません。

 また、行方不明の賃借人がいる物件があります。家賃が入金されていれば問題ないように思えますが、ある月を境に家賃が突然入金しなくなることがよくあるので注意が必要です。

 この場合は明け渡し請求訴訟を提起し、明け渡し請求を認める判決を取得した後に強制執行を行わなければならないことが大半です。訴訟に際しては公示送達を行ってもらうので訴訟手続きにかなりの日数を要します。賃借人が行方不明の状況では退去に向けた話し合いができません。家賃を滞納し続ける賃借人がいる部屋よりも対応が難しく、解決に日数を要します。

 家財の所有権は賃借人にあります。行方不明であるからといってオーナーが家財を勝手に搬出して処分すると損害賠償を請求されることがあります。実際に300万円の支払を命じた判例があります。このため、家財の撤去は強制執行により行うことが必要です。

 家賃を滞納している部屋、または賃借人が行方不明の部屋がある物件の購入は、それが1部屋であっても大問題です。立地が良好であっても購入はお勧めしません。