賃貸物件を借りる際に、在籍会社・アリバイ会社を利用するのは危険

家賃保証会社、連帯保証人、保証人サービス代行会社

賃貸物件を借りる際には、借りる方において家賃保証会社を利用するか、連帯保証人を指定してするか、保証人サービス代行会社を利用する必要があります。

家賃保証会社は、その賃貸物件への居住を希望されている方の職業、賃料滞納の履歴や、クレジットカードの利用状況および滞納歴等を調査し、個人信用情報に基づいて利用の可否を判断します。

家賃保証会社を利用できない方は連帯保証人を立てるか、保証人サービス代行会社を利用する必要があります。しかし、そのような方の連帯保証人を引き受けてくれる方はほとんどいませんし、保証人サービス代行会社も保証人の役割を引き受けるだけであり、連帯保証人の役割を引き受けるものではありません。このため、保証人代行サービスについては利用をお断りするオーナーが多いです。

そこで、いわゆる在籍会社やアリバイ会社が暗躍します。多くの場合、利用したい方から登録料、保証料、保証手数料等の名目で金銭を徴収し、著名企業に勤務していることを偽装した架空の人物を仕立て、偽の源泉徴収票を発行し、連帯保証人を偽装するパターンが多いです。賃貸物件のオーナーまたはオーナー側の不動産会社(元付業者)が在籍確認のために源泉徴収票記載の会社に電話する際は、在籍会社やアリバイ会社のスタッフが応答します。

以前は著名企業に勤務しているものの、何らかの事情により金銭的に窮している方が小遣い稼ぎを目的として自身の名義をこれらの会社に利用させる方がいました。しかし、近年では連帯保証人を引き受けることの危険性と、名義貸しは詐欺罪の共犯になることが周知されたため、名義を貸す方はとても少なくなっています。

在籍会社やアリバイ会社が発行した架空の源泉徴収票を持参し、賃貸物件を借りたいということで来店される方がたまにいます。

また、悪質な不動産会社では、賃貸仲介の担当者が在籍会社やアリバイ会社の利用を勧めることがあります。家賃保証会社の審査を通過できないと思われる方に「在籍会社をお使いになりますか」等と言って利用を勧めます。オーナーおよびオーナー側の不動産会社(元付業者)を騙し、賃貸借契約を強引に成立させます。さらに登録料、保証料などの名目で、仲介手数料とは別に高額の料金の支払を求めます。

もちろん、私の会社では在籍会社やアリバイ会社は全て出入り禁止にしています。利用を勧めることはありません。

連帯保証人には印鑑証明書の提出を求め、さらに連帯保証人引き受け承諾書に実印を押印していただいています。「連帯保証人を立てる」と言われる方が連帯保証人の印鑑証明書を提出しない場合は、賃貸借契約の締結をお断りしています。また、架空の源泉徴収票を持参して来店された方は、申し訳ありませんが全てお帰りいただいています。

入居中に、在籍会社やアリバイ会社を利用していることが発覚した場合

在籍会社やアリバイ会社を利用して入居していることが発覚した場合、オーナーと賃借人との間の信頼関係が破壊されたと言えることから、オーナーは賃貸借契約を強制的に終了させます。

即時退去を申し渡し、場合により違約金の支払いを求めます。最近では、賃貸借契約書に高額の違約金支払い条項が記載されていることがありますので注意が必要です。

また、詐欺罪の構成要件であるため、警察に告訴された場合は詐欺罪(刑法第246条第1項)として処罰されることがあります。オーナーは詐欺の被害者であり、詐欺罪は親告罪です。このため、オーナーが告訴をしない代わりに示談金の支払を要求することがあります。

また、他の事件で執行猶予付きの懲役刑を言い渡されている場合は、この程度の事犯でも執行猶予が取り消され、実刑に処せられることがあります。

在籍会社やアリバイ会社は反社会的勢力と繋がっていることがよくあります。この点からも、利用は絶対にお勧めしません。不動産会社の担当者が在籍会社・アリバイ会社の利用を勧めた場合は、その不動産会社に物件の紹介をお願いすることは避けるべきです。