金利は今後上昇する?不動産価格への影響は?

 円安が続いていることから雑誌記事、WEBサイトニュースなどに「金利は間もなく上がる」とか「黒田日銀総裁が2023年春に退任するのでその後は急上昇する」という論調の記事が多数掲載されています。

 その根拠は「円安を止めるため」というものです。確かに日米間の金利差を狙った機関投資家が大量に円を売りドルを購入していることが円相場が下落した原因の一つです。しかし、原因はそれだけではなく日本の産業構造が大きく変わり、急激に弱体化していることにも大きな原因があると考えます。

金利が上昇すると企業の倒産が続出

 コロナ禍が長期化したことから金融機関から運転資金を特別な条件で融資してもらうことにより存続している企業が多数あります。借り入れた資金は返済しなければなりません。

 コロナ禍は終息しつつありますが、繁華街における人出はそれ程多くありません。コロナ禍による不景気が続いているところに金利上昇が重なれば融資された資金を返済できなくなり、多くの企業が廃業または倒産することになります。

金利が上昇すると住宅ローンを変動金利で借りている方が返済不能になる

4,000万円をネット銀行から年利率0.38%で借り入れ、返済期間を30年に設定した場合を考えます。2022年10月現在においてネット銀行が採用している変動金利の利率は、0.38%前後のところが多いです。この場合における毎月の返済額は117,582円です。

金利が1%上昇し、1.38%になると毎月の返済額は135,756円
金利0.38%の場合より18,174円上昇

金利が2%上昇し、2.38%になると毎月の返済額は155,564円

金利0.38%の場合より37,982円上昇

金利が3%上昇し、3.38%になると毎月の返済額は176,949円

金利0.38%の場合より59,367円上昇

 多くの場合、激変緩和措置により返済額の急激な上昇は避けられると思いますが、融資期間が終了する際に未払いの利息を一括で返済しなければなりません。 

 金利が上昇するとローンの返済ができなくなり、任意売却又は不動産競売により自宅を売却するしかない状況に追い込まれる方が続出する恐れがあります。週刊ポスト10月28日号(24頁)によると、その数は120万件とのことです。

金利が上昇すると国債の価格が下落して銀行が評価損を抱え、貸し渋りが始まる

 国債価格の下落は財政破綻の原因になります。国債を保有する銀行は評価損を抱えることから企業などに対する貸し渋りが始まります。その結果、多くの企業が倒産して失業者が急増します。

金利を大きく上げることはできず、円安を甘受する方向になる?

 金利を大きく上昇させると住宅ローンの焦げ付きが100万件以上発生し、何万もの企業を倒産させる恐れがあります。失業者が急増し、収拾が付かなくなる恐れがあります。

 100%の自信を持って断言できるわけではありませんが、政府および日銀は責任を取りたくないとして、ここ数年は現状維持を続けることが想定されます。

 金利を上げることにより企業を倒産させて失業者を大量に発生させ、住宅ローンを返済できなくなる方を増やすよりも、円安と物価の高騰を国民に甘受させることを選択するのではないかと思います。

 ちなみにダイヤモンド不動産研究所のWEBサイトによると、どのシンクタンクも短期金利の上昇はないと予想しており、「変動金利の店頭金利は当面上昇しない」とのことです。

不動産価格への影響

 「金利の上昇により不動産価格が下落する」との風聞があり、不動産の購入を先送りにする方が増えている感があります。しかし、金融緩和が続行されるのであれば不動産価格は当面変わらないことになります。

 なお、建築資材の多くは外国からの輸入に頼っているので、これからも円安が続けば建築費は上昇し続けることになります。

※金利をどのように定めるかは政府および日銀に決定権があるので、必ずしも上述した投稿内容の通りになるとは限らないことをお断りしておきます。このブログの記載内容に基づいて行動し、損失が発生した場合でも筆者及び筆者が所属する有限会社大森不動産は一切の責任を負いません。