居宅は再建築可、共同住宅は再建築不可の土地があります
「利回りが良好な収益用不動産(1棟アパート、1棟マンション)を所有したい」という理由から地価が安い旗竿地や敷地延長型の土地、またはこれらの土地上に建つ収益用不動産を探す方が増えています。
中にはあえて「再建築不可」の物件を探す方がいらっしゃいますが、火災により全焼すると財産的価値はゼロどころかマイナスになります。このため、個人的にはお勧めできないことについて、昨日投稿しました。
本日は、「再建築不可ではありません」と説明されて購入した収益用不動産が老朽化したので解体して再建築しようとしたら、「再建築は認めない」と判断されたことから再建築を断念した事案について解説します。
物件を購入する際に「再建築可」という説明を受けたから購入したのに...
物件を購入した際には「再建築可」であったのに、年月を経たことにより条例が改正され、「戸建住宅の再建築は可能だが共同住宅の再建築は不可」になり、オーナー様が途方に暮れる事案が発生しています。
この場合は後述する「長屋」を建築するしかありません。長屋を建築出来る要件を満たしていない場合は戸建住宅を建築するか、土地を売却するしかありません。
問題点の所在
共同住宅(アパート、マンション)の建設に際し求められる要件は、自己居住用の戸建住宅を建設する場合よりも厳しく定められています。問題は、制限の多くが都道府県が定める条例によるものであり、長年の間に厳しくなる方向に改正され続けていることにあります。
つまり、購入時には収益用不動産の再建築が認められていたにもかかわらず、老朽化による建て替えなどの際に収益用不動産の再建築が認められないという事案が度々発生しています。
東京都の場合、東京都建築安全条例第10条が路地状敷地における特殊建築物(1棟マンション、アパートが該当)の建築を制限しています。条例によると、路地状部分(通路部分)の長さが20m超の旗竿地に特殊建築物を建設することは認められなくなっています。
(路地状敷地の制限)
第十条 特殊建築物は、路地状部分のみによつて道路に接する敷地に建築してはならない。ただし、次に掲げる建築物については、この限りでない。
一 路地状部分の幅員が十メートル以上で、かつ、敷地面積が千平方メートル未満である建築物
二 階数が三以下であつて、延べ面積が二百平方メートル以下で、かつ、住戸又は住室の数が十二を超えない共同住宅で、路地状部分の長さが二十メートル以下であるもの
三 前条第六号又は第十三号に掲げる用途に供する建築物で、その敷地の路地状部分の幅員が四メートル以上で、かつ、路地状部分の長さが二十メートル以下であるもの
四 前三号に掲げるもののほか、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める建築物
(昭三五条例四四・昭三六条例四五・昭四七条例六一・平五条例八・平一一条例四一・平二七条例三九・一部改正)
特殊建築物にはいわゆる「長屋」は含まれません。長屋とは、各部屋が独立した玄関を備え、共用廊下が設けられていない構造の建物のことをいいます。
長屋を建築するのであれば、上記の東京都建築安全条例第10条は適用されず、第5条が適用されます。条例が規定する要件を満たす限り、路地状部分の長さが20mを超える場合でも建築が可能です。
しかし、こちらも年月を経る毎に建築の要件が厳しくなっています。具体的には敷地内通路の幅員に関する規制が次第に強化されています。
ちなみに東京都以外の道府県、または市区町村の中には東京都建築安全条例よりも厳しい制限を設けていることがあります。
対策
今後、長年の間に条例がどのように改正されるかはわかりません。心配な方は、路地状敷地の土地上に建物が建つ収益用不動産を購入しないことをお勧めします。
路地状敷地の物件は土地が安いので共同住宅として運用する際には魅力的ですが、将来において再建築を行う際には予期しない制約を受ける恐れがあることを認識しておく必要があります。
※2022年12月1日追記
接道部分の間口に関する制限もあります。間口が狭い場合、戸建住宅は建設可、集合住宅は建設不可の土地があります。戸建住宅の場合はほとんどのエリアにおいて間口が2m以上あれば建設可能ですが、集合住宅の場合は規模により3m、4m、または6m以上が必要であることが「地域の条例」で規定されていることがあります。
必要な間口は「条例」により定められています。収益用不動産の建設用地を探す、または集合住宅を再建築する場合は当該エリアの条例を確認することを強くお勧めします。ネット検索でわからない場合は都道府県または市区町村の建築課などにお尋ねください。
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