一括査定サイトは間もなく終焉か
不動産に関する情報を記載しているWEBサイトの中に、一括査定サイトを利用するように誘導するものがあります。
一括査定サイトの多くは「複数の不動産業者に見積もらせることにより適正な相場を把握できる」等の宣伝文句を利用しています。最近は「査定の依頼先は大手の不動産会社のみなので安心」とするWEBサイトが登場しています。
一括査定サイトは、いわゆる「囲い込み」に利用されやすい
問題は、市場流通価格よりもはるかに高い査定結果を提示し、不動産の知識に乏しい売却希望者を一本釣りしようとする会社(というか営業担当)があまりにも多いことです。
不動産に関する知識に乏しい売却希望者は、一括査定サイトで最も高額な査定をした不動産会社に売却を依頼しがちです。しかし、その価格で売却できることはまずありません。
「囲い込み」の手口
販売活動を専任媒介契約で引き受けた後、宅地建物取引業法が義務づけていることから一応はレインズに登録するのですが、問い合わせ(特に不動産会社からの問い合わせ)を断り続けるのが常套手段です。
何ヶ月かが経過したところで「問合せがないので価格を下げましょう」と提案し、値下げに同意させます。その後も値下げを何回も提案し、売却価格が相場の8割程度になったところで建売住宅の建築業者に物件を紹介して成約させます。不動産会社は両手取引としての仲介手数料を得ます。
価格を相場の8割程度にまで下げて建売住宅の建築業者に売却すると両手取引になります。この場合の仲介手数料は、市場流通価格で売却する際に得られる仲介手数料の 0.8×2=1.6倍 になります。
一括査定サイトの査定結果に舞い上がった結果、相場の8割程度にまで下げて建売住宅の建築業者に売却することになり、しかも売却出来るまでに長期間待たされた方が数多くいらっしゃいます。
このブログでは何回か投稿していますが、特に大手や中堅の不動産会社では営業担当における給与を歩合制としているところが多く、高額な仲介手数料を得ることに成功した者が成績優秀であるとみなしています。このため、このような横暴な行為が横行しています。
一括査定サイト利用者の名簿が売られている
一括査定サイトでは査定依頼者の連絡先、氏名などの登録が必須とされています。登録すると、個人情報が一括査定サイトにおける査定を行っている会社だけではなく、多くの不動産会社に伝わります。
何故多くの不動産会社に伝わるかというと、一括査定サイトを利用した方の名簿が有償で販売されているからです。
筆者の会社は東京都目黒区にあります。一括査定サイトの関連会社から「利用者の名簿を購入してください。目黒区における利用者の個人情報を毎月5万円で提供します。他の区における情報についても各区毎に月5万円前後で提供できます。」とのお誘いを受けたことがあります。
モラルに反する行為なので、筆者の会社では購入をお断りしました。
どこの会社であるかは申し上げられませんが、テレビCM等で派手に宣伝していた会社の関連会社です。一括査定サイトを構築した目的は、査定に参加する不動産会社から参加費を徴収するだけではなく、不動産の売却を希望する方の個人情報を集め、多くの不動産会社に販売することにあったとしか思えません。
一括査定サイトを利用すると不動産会社による電話、および夜討ち朝駆けのアポなし訪問等が多発し、収拾が付かなくなることがあります。人気がある好立地の物件ではそのようになる恐れが高いです。酷い場合は勤務先を調べ、勤務先を訪問することもあります。
一括査定サイトの規約に「査定を行う不動産会社による戸別訪問はしない」などと記載されていても安心できません。多くの不動産会社における営業担当は歩合制で雇用されているため「自分の成績にしたい」という意識がとても強いです。一括査定サイトの規約を完全に無視し、何食わぬ顔で戸別訪問をする者がいます。
また、利用者の名簿を有償で入手した不動産会社は一括査定サイトにおいて「査定を行う不動産会社」ではないので規約に縛られず、強引な営業活動を展開します。
一括査定サイトで提示される価格はいい加減
最も重大な問題は、一括査定サイトにおける査定結果はいい加減で全く参考にならないことです。一括査定サイトを利用したところ、実際の相場よりも2割以上も高額な査定結果を示されたことから完全に舞い上がり、筆者に「一括査定サイトによる結果よりも高い価格で売却して欲しい。」と依頼されたお客様がいらっしゃいます。
相場よりも高い価格で売却できることは極めて稀です。その価格で売れることはない旨を、資料を用意して丁寧に説明したのですが、相談者は「一括査定サイトによる査定結果ではあるが、大手の○○不動産による査定なので間違いない。そちらの査定はおかしいのでお宅には頼まない。」と言われてお帰りになりました。
その後はこの大手の○○不動産による囲い込みを受け、2年以上待たされた挙げ句、市場流通価格の約8割で建売住宅の建築業者に売却したという話を聞きました。「大手の不動産会社による査定は正確である」として心の底から信じる方がとても多いのですが、全く安心できません。
市場流通価格と比較してあまりにも高い価格では住宅ローン審査を通過できない
戸建住宅、分譲マンション等の居宅、または住宅用地の場合は住宅ローンを利用して購入する方がほとんどです。金融機関は独自に査定を行い、価格が適正であるかを個別に判断しています。
一括査定サイトで提示された最も高い価格、または市場流通価格を大きく上回る価格で売却したくてもローン審査の結果は「否認」になるることがほとんどです。つまり、その価格では売却できないということです。
利用しないことをお勧め
筆者の個人的な見解ですが、上述した多くの理由により一括査定サイトは社会悪であると判断するしかありません。利用しないことをお勧めします。不動産の査定は現地訪問が不可欠であり、机上査定にはなじみません。
最近になり、社会悪であることに気付いた方が次第に増えている感があります。間もなく終焉を迎えるのではないかと考えています。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません