収益用区分マンションの購入は危険か
収益用不動産の代表格は1棟マンションおよび1棟アパートですが、マンションの一室が「収益用中古区分マンション」として売られています。都心でも1,000万円未満で購入できる物件があります。
「老後は2,000万円が必要」というキャッチフレーズの一人歩き、およびコロナ禍の長期化による飲食業の衰退から収益用不動産の運営を始める方が増えています。収益用中古区分マンションは1棟アパートなどよりも安く購入できることから「収益用不動産運営の初心者向きであるに違いない」とお考えになり、購入して賃貸住宅の運営を始める方が増えています。
購入希望者が多くいらっしゃいますが、売り出される物件の数も多いです。売却理由の多くは「思うような利益が出ないどころか、マイナスになっているから」というものです。
最近は不動産に関する解説本やテレビ番組、セミナー等で「収益用中古区分マンションの購入は危険」と紹介されることが増えています。本日は、本当に危険なのかについて解説します。
収益用中古区分マンションの特性に由来する主なリスクは以下の通りです。
1.空室リスク
例えば10部屋がある1棟アパートにおいて一室が空室になった場合、1棟アパート全体における賃料収入は1割少なくなります。しかし、収益用区分マンションを1室だけ運用している状況で空室が生じると、賃料収入を全く得られません。
2.管理費および修繕積立金を毎月徴収される
1棟アパートや1棟マンションでは徴収されませんが、収益用区分マンションでは現況が空室であっても毎月必ず徴収されます。このため、空室期間が長期化すると大赤字の運営を迫られます。
3.管理組合が定める各種規則がある
床材の交換、ペット飼育に制限を設けているところが多くあります。
4.管理組合が活動停止に近い物件がある
管理組合の役員になりたい方が少ないために同じ棟内で部屋を一番多く所有するオーナーが一人で理事長を拝命し、判断が必要な事項のほぼ全てを理事長が独断で判断しているマンションがあります。
このようなマンションでは管理組合が機能を停止しているに等しく、管理費や修繕積立金の滞納が多額であることがよくあります。大規模修繕が近くなると修繕積立金の大幅値上げが理事長の独断で決定されることがあり、総会決議でも見過ごされ、酷い場合は賃料収入の半分が管理費や修繕積立金として徴収されることがあります。
これらの理由から「収益用中古区分マンションの購入は危険」とする主張がWEBサイトなどに掲載されています。しかし、この主張は妥当ではなく「収益用中古区分マンションの運営は簡単」という誤解が広まっているだけであると思います。数多く購入し、黒字で運営している方が数多くいらっしゃるからです。
購入する際の注意点
1.立地に注意
賃貸住宅に対する需要が少ないエリアの物件、または近くに競争相手となる物件が多い物件では、空室期間が長くなることがあります。
また、駅近でも駅から物件までの間に急坂がある物件、近くに葬祭場などの嫌悪施設がある物件、前面道路の幅員が狭いのに大型バスやダンプカー等が頻繁に通行する物件では空室が発生すると次の入居者がなかなか決まりません。
鉄道の線路際や大通りの交差点近くにある物件、消防署の近くにある物件は安く売られていることが多いですが、短期間で退去する方が多いので長期のスパンで捉えると空室期間が長くなりがちです。
大通りの交差点近くは排気ガスが淀みやすく、バルコニーに洗濯物を干せません。消防署の近くでは昼夜を問わず消防車及び救急車のサイレンがうるさいです。
工場の近くにある物件も要注意です。稼働していると大音量の騒音が発生する物件があります。夜間および休日は静かでも、平日の日中はとてもうるさい物件があります。
2.建物の共用部における清掃が行われていない物件を避ける
管理組合が機能を停止していることがあります。特に建物の全体管理を管理会社に委託していない、いわゆる「自主管理」の物件では共用部の清掃が行き届いていない等の問題がある物件が多いです。このような物件では空室期間が長期化しがちです。
3.重要事項調査報告書を確認
この書類は管理組合または建物の管理会社に作成してもらいます。管理費および修繕積立金として積み立てられている金額、および購入を検討している物件における納付状況が記載されています。
建物全体としての積立金が少ない、または同じ建物内で管理費や修繕積立金を滞納している部屋が多い場合は、購入を避けるべきです。
4.眺望および近くの嫌悪施設を確認
バルコニーに背の高い目隠しが貼られているため、バルコニーからは目隠し板しか見えない物件があります。また、隣の建物の壁しか見えない物件、または眺望の多くを墓地が占める物件は避けるべきです。
賃貸中の物件は部屋に立ち入れないので、地図からおおよその眺望を推定します。
5.入居者の属性に注意
現況賃貸中の物件では、現在の入居者が家賃の滞納を繰り返していないかを必ず確認します。
6.築年数
いわゆる「旧耐震基準」で建てられた建物の場合、家賃を低めに設定しても入居者がなかなか決まりにくい傾向があります。震災の際における身の安全を重視する方が増えているからであると思われます。
「旧耐震基準」には昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認が行われた建造物が該当します。なお、当時の建築技術では竣工に長期間を要した建物が多く、建築確認申請・着工から竣工までに1年半~2年を要した建物があります。このため、竣工が昭和57年(1982年)または昭和58年(1983年)の建物でも「旧耐震基準」で建てられていることがあります。
まとめ
「収益用中古区分マンションの運営は簡単にできる」というのは大きな誤解です。価格が安いことから収益用不動産の運営を始めて行う方に最適なイメージがありますが、都心では「稼げる物件」と「稼げない物件」との格差が広がっています。どちらかというと熟練者向きです。
購入後に運営が行き詰まる原因の多くは物件の選択を誤ったことにあります。特に価格のみに注目される方が多いですが、上述したチェック項目を調査せずに購入すると運営が破綻する恐れが大きいです。
見落としがちなのは立地と管理組合の活動状況です。
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