賃貸保証会社による追い出し条項を最高裁が違法判断

毎日新聞のWEBサイトから引用します。

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債務保証会社の「追い出し条項」は違法 家賃滞納巡り最高裁判決

毎日新聞 2022/12/12 15:11(最終更新 12/12 20:37)

 NPO法人「消費者支援機構関西」(大阪市)が家賃債務保証会社「フォーシーズ」(東京都港区)に、賃貸住宅の賃借人との間で交わす契約条項の使用差し止めを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は12日、家賃を2カ月以上滞納するなどの要件を満たせば建物の明け渡しがあったとみなす同社の条項を違法と判断し、使用の差し止めを命じた。堺徹裁判長は「条項は(民法の)信義則に反して消費者の利益を一方的に害している」と指摘した。

 裁判官5人全員一致の意見。小法廷は、家賃を3カ月以上滞納した場合に賃借人への催促なく契約を解除できるとする同社の条項の使用差し止めも命じた。最高裁が特定の契約条項の差し止めを命じるのは初。

 家賃債務保証会社は入居時に賃借人から委託料を受け取り、賃借人が家賃を滞納した際に立て替える。滞納が増えると保証会社の立て替えが膨らむため、滞納などを理由に賃借人の明確な同意なく家財を運び出すことを可能とする契約条項を設ける会社もある。「追い出し条項」と呼ばれ、財産権の侵害に当たるとの批判があるが、今回の最高裁判決は適正な法的手続きを踏まない「追い出し」に歯止めをかけた形だ。

 フォーシーズの条項は、家賃を2カ月以上滞納▽連絡が取れない▽建物を相当期間利用していない▽建物を再び使わない意思が客観的に見て取れる――の4要件を満たせば、賃借人が住居を明け渡したとみなす内容。小法廷は、条項により賃借人が建物を使う権利が消滅していなくても保証会社が一方的にこの権利を制限することになると指摘。建物明け渡しの裁判などを経ずに保証会社が明け渡しを実現できてしまう点も踏まえ「賃借人と保証会社の利益の間に看過し得ない不均衡をもたらしている」として、条項は消費者契約法に違反すると結論付けた。

 1審・大阪地裁判決(19年6月)は条項を違法としたが、2審・大阪高裁判決(21年3月)は適法としていた。フォーシーズは「判決文が届いていないので、現時点ではコメントできない」とした。【遠山和宏】

毎日新聞

 賃借人が家賃を滞納すると、家賃保証会社は家賃相当額をオーナー様に代位弁済しなければなりません。行方不明の状態が長引くと家賃保証会社の代位弁済額が多額になり、経営状態の悪化に繋がります。 

 また、大半のオーナー様は、「貸室を生活の場にしないならば退去して欲しい」と思っています。今回の判決で問題になった追い出し条項の内容に近い契約条項を設けている家賃保証会社は他にもあります。

問題点の所在

 この契約条項が合法であるとされると、賃借人が家財を置いて夜逃げした場合に家財を搬出することが許されることになります。

 合法と解すると、賃借人が家賃を長期滞納した場合に家賃保証会社が賃借人に「このままだと家賃の滞納額に遅延利息を加えた金額を請求することになる。想像を絶する金額になるのでほぼ間違いなく返済できない。このまま夜逃げした方が良い。」と耳打ちし、「夜逃げ」を誘導する事案が激増することになりかねません。

 夜逃げをしたことをもって賃貸借契約が解約されると賃借人は「住所」を失います。賃借人が無職である場合、住所を失うと再就職が極めて困難になるのでホームレスになる恐れが高くなります。このため、ホームレスの激増に繋がり社会不安を煽ることになります。

最高裁判決は、家賃保証会社による「夜逃げの勧め」を抑制

 今回の最高裁判決により、賃借人が「夜逃げ」を勧められたことにより自発的に夜逃げをしても、「部屋を明け渡した」とは認められないことになります。つまり家賃保証会社が家賃を滞納している賃借人に夜逃げを勧め、その結果賃借人が夜逃げをした後に室内の家財を搬出して次の入居者を募集することは「違法」と判示されたことになります。 

 賃借人が家賃を滞納している、または賃借人が行方不明である場合において明け渡しを求めるためには明け渡し請求訴訟を提起して裁判所に審理してもらい、明け渡し請求を認める判決を得なければならないことを判示したと言えます。

 家賃の滞納に悩むオーナー様においては少しがっかりする判決かもしれません。