大学が都心に回帰する動き、不動産業界に多大な影響

 2023年4月に、東京都八王子市にある中央大学法学部が文京区に移転します。タウンニュースの記事ら引用します。

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中大法学部移転に影響
今春 地元不動産会社ら悲鳴

 多摩センター駅に近い中央大学法学部(八王子市)が今春、新設される文京区のキャンパスへ移転する。5700人を超える学生の流出に地域からは悲鳴が聞かれる。

 中大法学部は学内最多の5740人(昨年5月時点)の学生が所属する看板学部。4月に文京区へ移り、その後の多摩キャンパスは中大の中長期事業計画によると留学生の受け入れ先としての設備を強化し、グローバルキャンパスを目指していくとなっている。

 中大法学部の移転が地域の企業や店舗に与える影響は少なくない。学生向けの賃貸住宅を扱う同駅近くの不動産会社の1つは管理物件のうち、中大生が占める割合は高いといい、その影響が出始めているという。「仕方がないことだが、厳しいとしか言いようがない」と同社社長。今後は賃貸以外の事業にも力を入れていく方針を立てていると話す。

 また、中大生が数多く通うという八王子堀之内にある飲食店の店主は「法学部の学生は長期の休みの時でも田舎に帰省せずに大学で勉強し続ける子が多い。季節に関係なく来店してくれるのはありがたかっただけに影響は大きい」と肩を落とす。

 全国的に見ても近年、キャンパスを都心に移す大学が増えているようだ。京都府を拠点とする立命館大学は現在、一部学部を2024年に滋賀県草津市から大阪府のキャンパスへ移転させることを発表しているが、滋賀県や草津市は街への影響を考え、要望書を大学に提出した。「地元不動産会社などへの影響は避けられない。地域経済にマイナスに働くと考えている」と同市の担当者は話す。

~以下、略~

タウンニュース

 ご承知の通り、都心の大規模開発により大学のキャンパスを新設できる広大な土地が少なくなりました。さらに「地域の活性化を図る」という国の方針と相俟って、郊外にキャンパスを移転する大学が急増しました。

 都立大学および中央大学法学部は八王子に移転し、早稲田大学は埼玉県所沢市にキャンパスを設置しました。法政大学経済学部は多摩キャンパスを新設して町田市に移転しました。その他にも数多くの大学が郊外に移転し、学部を新設する際にはキャンパスを郊外に設けるところが増えています。

 しかし、新設された郊外のキャンパスの多くは交通が不便であり、評判がよくありません。外部から優秀な教授陣および講師を招きたくてもキャンパスへの交通が不便であることから優秀な教授陣および講師が集まらないという深刻な問題が発生しました。

 さらに、キャンパスを郊外に移転した大学では入学に必要な偏差値が下がる現象が発生しました。都心に残った大学の入学に必要な偏差値との差が顕著になり、郊外にキャンパスを移転、または新設した大学の多くは後悔しているようです。

 現在、キャンパスを都心に戻す動きが次第に現れています。2023年4月に中央大学法学部が都心に回帰することになりました。法政大学経済学部も市ヶ谷への移転を検討しています。

郊外の大学キャンパス近くで営業している賃貸仲介専門の不動産会社は大激震

 郊外のキャンパスにおける立地は交通が不便なところが多いです。このため、郊外の大学キャンパスの近くに多数の賃貸マンション、アパートが建設されました。

 そして大学キャンパスの近く、または最寄り駅の前には大学生が下宿する賃貸マンション、アパートへの入居を仲介する不動産会社が数多く開業しました。

 しかし、郊外の大学キャンパスが都心に移転すると、学生向けの賃貸物件に対する需要が全くなくなるので、賃貸仲介専門の不動産会社にとっては大激震です。それ程遠くないうちに移転または廃業を迫られる会社が増えると思われます。

オーナー様においても大激震

 学生向けの賃貸マンション、アパートを所有しているオーナー様におかれても大激震です。

 入居している学生が退去した場合、新たな学生が入居することがほとんどない状況になることから賃貸マンションまたはアパートを現況で売却しようと思っても高い価格で売れることはまずありません。このため、賃貸住宅の運営を諦めなければならなくなるオーナー様が増えることが想定されます。

学生向けの賃貸物件運営は斜陽

 最近、都心の大学キャンパス近くにある学生向け賃貸物件、特に築古の賃貸物件が解体され、更地にして売却されることが増えています。コロナ禍の長期化および不況の深刻化に伴い、賃貸物件を借りて都心の大学に通う方が減少しているからです。

 都心における賃貸物件の家賃は高額であり、さらに新型コロナウイルス感染症の蔓延により学生のアルバイト先であった飲食店が閉店しました。

 このため、親からの仕送りとアルバイトによる収入のみでは家賃および授業料を支払うことが困難になりつつあります。今後は有名な一部の大学を除き、地方の出身者は地元の大学に通うパターンが定着するのではないかと思います。

 さらに憂慮しなければならないのは少子化です。今後、入居者を学生としている収益用不動産の購入はお勧めできない状況になると思われます。