繁忙期終了、空室の賃貸物件にADや業務委託費は必要か

 春の繁忙期が終わりました。空室を早く埋めたいのに入居者が決まらないまま新年度を迎えた賃貸物件のオーナー様の中にはガッカリされている方がいらっしゃることと思います。

 「何としても次の入居者を決めたい」とお考えになり、不動産会社に「客付け会社には仲介手数料の他にAD(広告宣伝費)または業務委託費を支払うので次の入居者を早く決めて欲しい」と言われる方がいらっしゃいます。また、オーナー様が依頼している不動産会社(元付業者)がオーナー様に「ADを支出してもらえませんか」などと誘うことがよくあるようです。

 今年の繁忙期では、賃貸マンション(東京都区内)における入居者募集広告(客付けを行う不動産会社向け)の中に「AD200%」(賃料の2倍を広告宣伝費として支払うという意味)と記載されているものが多くありました。

 仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で定められています。貸主および借主から合計で1か月分の賃料相当額に消費税を加算した金額を収受できるとされています。

 また、借主の承諾を得られている場合は借主から賃料1か月分の賃料相当額に消費税を加算した金額を仲介手数料として収受し、貸主からは仲介手数料を徴収しない対応で構わないとされています。

 仲介手数料の他にAD(広告宣言費)を収受する場合は、特別な広告を不動産会社に依頼した場合に実費のみを請求できるとされています。しかし、現実には広告出稿の有無を問わず、成約した際にはあらかじめ取り決めた金額を請求することが多いです。 

ADや業務委託費は本当に必要か

 例えばAD200%の場合、オーナー様が支払う広告宣伝費は家賃の2か月分相当額(消費税別)です。仲介手数料はこの他に必要です。すると家賃10万円の賃貸マンションにおける仲介手数料は消費税込で11万円、ADは22万円になります。複数の空室がある場合、ADの総額はかなりの金額になります。

 賃貸物件の入居者募集に際し、不動産会社からAD(広告宣伝費)・業務委託費等の支払を求められた場合は、必要性をよく検討する必要があります。また、オーナー様から不動産会社にAD(広告宣伝費)・業務委託費等を支払う用意があることを伝える場合も、妥当な金額を検討しておくことをお勧めします。

 過疎地にある築古の物件ではでなく、ADや業務委託費に充てられる予算があるならば外壁や貸室内のリフォーム費用に充当する方が得策である場合があります。

 入居先を探している方は貸室の内部だけではなく、建物の外壁にも注目しており、薄汚れていると敬遠される原因になります。外壁の汚れ、塗装の剥げ等があるの場合は外壁塗装の費用に充当することで次の入居者を早く決められることがあります。

 貸室内もクロスの貼り替え、古いエアコンやガスコンロの入れ替え、宅配ボックスの設置等を行う事により早期の客付けにつながることがあります。

 なお、交通が不便かつ築古の物件では、ADや業務委託費の支払が不動産会社の営業社員におけるモチベーションの向上に寄与します。その結果、早期の入居者確定につながりやすくなります。

★おことわり

「AD等の請求や支払は宅地建物取引業法違反である」とする解説が、不動産に関するWEBサイトおよび解説本に掲載されています。

 本日の投稿ではADおよび業務委託費等の順法性に関する内容をあえて割愛しています。様々な議論があることを承知した上で投稿していることをお断りしておきます。